モスクワ芝居三昧の旅(X) 
  
第5報(6日目)観劇は『巨匠とマルガリータ』
      
    
2017年06月02日     
山と橋を渡る  Masao's Photo Gallery


午前中はモスクワ芸術座
午後からはメイエルホリドの家博物館
そしてスタニスラフスキーとチェーホフのお墓まいりをして
夕方は
モスクは芝居三昧最後の舞台
『巨匠とマルガリータ』です



11:08 ボリショイ劇場

地下鉄からマールイ劇場を通りボリショイ劇場の左手から
ボリショイ新館に向かいます



劇場村はクレムリンの北側にあります



ボリショイ劇場新館



モスクワの街はとても綺麗です



モスクワ芸術座に到着

建物の上にあるカモメのマークが見えますか
モスクワ芸術座のシンボルマークです



向かい側にはチェーホフの銅像が



うれしいです



劇場の入口



チケット売り場

残念ながら
モスクワ芸術座の観劇予定はないのです
堀江先生によると
海外の俳優を招いて芝居をするなど
若干商業的になっていて
演劇的魅力が少ないと・・・
残念ですが仕方ありません



なんと
劇場のポスターには『巨匠とマルガリータ』
私達は本日ユーゴザ−パド劇場で観るのですが
モスクワ芸術座でもレパートリーに
人気のある芝居なんですね

憧れのモスクワ芸術座を後にして
近くのレストランで食事
この後メイエルホリドの家博物館に行きます



メイエルホリドの家



スタニスラフスキーが彼が私の後継者だといった
メイエルホリドの家です

モスクワ大学法学部を中退後
モスクワ・フィルハーモニー演劇学校で学び
1898年モスクワ芸術座に入り「かもめ」「三人姉妹」等に出演。
退団後は演出家・俳優として様々な演劇の実験を行い
十月革命の翌年共産党に入党
革新的演劇を目指すなか
1920年メイエルホリド劇場を創設
前衛的芸術運動に多くの影響を与えるが
スターリン時代に形式主義と批判され
39年逮捕、翌年処刑
55年名誉回復、再評価された波乱の演劇人



彼は社会的リアリズム演劇を否定し
自説を曲げなかったため
イギリス・日本のスパイ容疑で銃殺に処せられました
スタニスラフスキーは
メイエルホリドをよろしく頼む、彼は私たちの劇場
いや演劇そのものにおける私の唯一の後継者だ

と遺言したのですが
スタニスラフスキーが亡くなると後ろ盾を完全に失ってしまつたのです

そして彼の妻もこの部屋で
何者かに
多分秘密警察の手によって殺されたのでした
悲しいできごとです



この舞台装置
何処かで見たことがあるような?



舞台装置の模型です
1922年4月25日までは分かりますが
ロシア語は分かりません
あとで調べたら
『堂々たるコキュ』の舞台模型でした



妻で女優の女優のジナイーダ・ライヒ?
多分そうかな



ジナイーダ・ライヒ



舞台模型



メイエルホリドはリアリズムから離脱して
近代以前の芝居を探求しました
古典のコメディ・デラルテに代表される民衆演劇や
東洋の中国の京劇や
日本の歌舞伎
そしてエジブトの壁画的演劇(写真上)など
演劇的演技(シアトリカルな演劇)を求めていたのでした
スタニスラフスキーとは全く別な演劇ですが
演劇は演劇を否定することから始まるように
それが芸術であり個性的な人間である証しであることを
二人の関係が示しています
メイエルホリドもまたスタニスラフスキーへの敬意を失わなかつたこと
このことがロシア演劇のアウフヘーベン?なのですね

スタニスラフスキーの家に歌舞伎や京劇の本があったこと
納得です



これからユーゴザーパドに行きます
昨年12月に亡くなったヴリャコーヴィッチ氏は
メイエルホリドの孫弟子
イギリスの演出家ピーターブルックもまた
メイエルホリドの影響を受けていました
1971年俳優座ハムレットの舞台はまさに「なにもない空間
その斬新な舞台に驚きました



外は9℃
今年のモスクワは特に寒い
今日は6月というのに・・・



寒い日の昼食は暖かいボルシチ



こんな雰囲気のレストランです

さてこれからノヴォデーヴィッチ修道院へ



チェーホフのお墓



スタニスラフスキーのお墓
チェーホフのお墓の隣にありました



カモメのマーク
この辺りはモスクワ芸術座関係者のお墓です



『巨匠とマルガリータ』の作者
ブルガーコフと
マルガリータのモデルで三番目の妻
エレーナ・ セルゲーヴナのお墓

1917年のロシア社会主義革命のあと
スターリンが最高指導者になると
表現の自由は奪われ宗教は禁止され
これを犯したものは収容所か精神病院に強制送還されました
ブルガーコフは「巨匠とマルガリータ」を書いたものの
発表できず病死
生前、発表できるあてもなく書き綴られた原稿と共に
『巨匠とマルガリータ』の原稿は
未亡人となったエレーナの元に残っていました
ブルガーコフが亡くなってから26年後の1966年
検閲による削除を含む不完全なテキストでしたが
「モスクワ」誌に発表され
そして
検閲による削除の復元を求めるエレーナ夫人は
完全版をフランスで出版
1973年にモスクワで単行本として発表されると
ソ連国内で驚異的な成功を収め
世界各国でも相次いで翻訳され
ブルガーコフはこの作品によって
燃え尽きた灰の中から蘇った
まさにこの舞台と同じ運命となったのです

岩波文庫にもあるので
読んでみてください



さてこれからユーゴザーパド
『巨匠とマルガリータ』を見に行きます

1920年代のスターリン体制下のモスクワと
2000年前のエルサレム
時空を超えて奇想天外なドラマが展開します

マルガリータには夫がいるのですが巨匠と出会い
二人は恋に落ちてしまいます
巨匠は
2000年前イエスの磔の刑を防ぐことができなかった
ユダヤ駐在のローマ総督ピラトの葛藤を描いた小説を書いています
マルガリータはいつも決まった時刻にやって来て
巨匠の小説を読み励まします
二人は幸せな時を過ごしていました
小説が完成したので編集長に読んでもらうと

きまずい雰囲気
(当時禁止された宗教の話ですから)
それでも哀願し
なんとか抜粋が発表されると
轟々たる非難
巨匠は自信を失い原稿を暖炉に投げ込んで
失踪したのでした

マルガリータは巨匠を捜すために
悪魔たちと手を組みます
いわれた時刻に一糸まとわぬ姿になり
全身謎のクリームを塗って
ほうきにまたがり空を飛びます
まるで魔女の宅急便のように
巨匠を貶めた編集長のアパートを水びたしにして
復讐を遂げながら
悪魔たちの待つところに・・・・

実はこれは小説の世界であって
舞台では抽象的に表現されます



モスクワの劇場での魔術ショー
天上から紙幣を降らせ
豪華なドレスや帽子や靴を押しなべて
皆さん!お好きなように!どうぞ!どうぞ!
観客達を鼓舞させます
やがて
悪魔たちが姿を消しショーが終わると
紙幣は紙くずに
会場は裸の女性たちが溢れるありさま
これはいったい何なのだ

悪魔たち
悪魔の頭領  ヴォランド  
部下の殺し屋  アザレロ  
きざ男の  コローヴェイエフ
口髭猫の  ヘゲモート   
全裸の美女 ヘッラ     



舞台にはトタン板が吊るされていて
激しくたたきながら登場し退場します
故ベリャコビッチ氏のアイデア
トタンの向こうとこちらは
死と生の世界なのか

マルガリータは箒(ほうき)で空を飛びません
薄い半透明のベールをまとい激しく飛び交います
ヴォラント役は芸術監督のレウーシンさん
マルガリータ役はカリーナさん
昨日錠前屋クレーシチを演じた
アルクセイワーニンさんがピラトを
役者を演じたザトーヒンさんがキリストを演じるなど
驚きです



こうして私たちのモスクワ芝居三昧の旅
最後の幕が閉じました

明日は再び仁川経由で帰ります

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До свидания.
ダ スヴィダーニャ
さようなら(また、会うときまで)


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