『蝋燭の灯、太陽の光』

観劇記 あまご 
2014年2月16日(日)
紀伊国屋サザンシアター
劇団 民藝
          作 :テネシーウィリアムズ   
          訳 :吉原豊司
           演出:高橋清祐
          
         
 大恐慌の頃、想像を絶するようなアメリカの危険な炭鉱で働く家族の物語です。あのテネシー・ウィリアムズが学生の頃に、こんな作品を書いていたとは驚きです。あらすじは・・・
 夫ジョンを失ったファン(日色ともゑ)は、他に頼るところなく、吹雪の夜に幼い息子ルークを伴い、ジョンの両親の住む炭鉱町にやってきます。息子を亡くした悲しみと苛立ちを感じながらも、不思議な包容力で貧相な身なりの親子を迎えるジョンの母親へスター(箕浦康子)。へスターの夫で頑固な炭鉱夫ブラム(千葉茂則)、次男のジョエル(西部守)と、5人の新しい生活が始まりました。



 当時の炭鉱は今でいえばブラック企業、給料は会社が払う金券、得る現金は僅かな故、衣食住はすべて会社のショップから金券で買わなけらばなりません。超・超・超のブラック企業で働く奴隷労働者、今でいう社奴、身も心も家族もみんな会社に支配されているのです。この町・この生活から抜け出すためには、文字を学び(当時の労働者は殆どが文盲)都会の学校に行き、新しい仕事を得なければなりません。ファンは息子を進学させるため、洗濯屋を始めすべての自己犠牲の元で懸命に働き資金を貯めます。


 それから10数年、ルーク(岩谷優志)が成長して進学する時が近づいてきました。しかし、進学するにはまだ資金が足りません。ルークは不足した資金を自ら稼ぐために、母ファンの猛反対を押し切って炭鉱で働き始めます。しかも最も危険な鉱区に、そして、事故が起こり、遺体が運び込まれます。ああ〜っとため息が・・・
しかし、亡くなったのは、へスターの次男ジョエル(西部守)、なぜか、ほっとした自分、悲しいかな・・実に恐ろしい芝居です。
 僅かな救いはラストシーンでした。ストライキに突入し、食料が尽き絶望の段底、息子や、へスターの娘スター(桜井明美)の恋人で組合の指導者レッド(吉岡ふとし)に説得されて、ルークのための進学資金を提供し、労働者たちの家族は飢えから救われ、ストライキは成功します。自分の家族のことしか考えなかった、ファンが働く仲間を救った。蝋燭の灯りのように手元しか見えなかった、ファンが太陽の輝くような大きな世界に・・・でも、あまりにも悲惨すぎて、私には太陽の光がまぶしすぎるように感じました。
 今の時代、ふたたび100年前の暗黒の時代に向かっているような気がします。息子や娘たちが、そしてまだ見知らぬ孫たちが、平和で格差なき世界で生きられるよう願わずにはいられません。劇団民芸の3人の女優さん(箕浦さん、日色さん、桜井さん)とてもよかったです。見応えのある芝居でした。
写真はパンフレットより


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