『テンペスト(嵐)』
                              観劇記 あまご 
          作 : シェイクスピア  
          訳 : 松岡和子
           演出: 白井 晃
               新国立劇場 中劇場
                  
 
 今回で3回目となった東京観劇ツアーの最終日はシエイクスピア生誕450年を記念しての新国立劇場による「テンペスト(嵐)」です。幕開けは、ナポリ王達を載せた船が嵐の海の場面から始まります。難破船がどのような形で現れるのか、新国立中劇場のあの深く大きな奈落の底からせりあがるのか、中吊にされてさ迷うのか、新国立のこのホールでしかできない大掛かりな装置を想像していたのです。ところが、舞台を見ると、そこは何もない空間、ただ広い舞台に灯りの付いたスタンドが1本あるだけでした。『そこに一人の男が立ち、そして彼を見つめるもう一人の人間。演劇が成立するためにその他になにがいるだろう。』まさにピーター・ブルグのいう『何もない空間』です。日本で上演されるシェイクスピアの作品はピーター・ブルグの影響を強く受けてシンプルな舞台装置が多いですね。ちょっとがっかりかな・・・と思っていたところに、突然、沢山のダンボールを積みあげた台車を引きずり回しながら運送屋さんらしき恰好をした人たちが絶叫しながら現れて、嵐の場面が始まるのでした。驚きました!
 あらすじはパンプレットからの転載です。
 元ミラノ大公プロスペローは12年前、弟アントーニオとナポリ王アロンゾーの謀略によりその地位を追われ、娘ミランダとともに海に流された。やがて漂着した孤島で魔術の修練を積み、空気の精エアリエル、醜い怪物キャリバンを従えて暮らしていた。その島は豊かな自然に恵まれ、妙なる楽の音がこだまする一種の桃源郷であった。
 そこにアントーニオ、アロンゾー一行の乗った船が差し掛かると、船は突然の嵐に遭遇し、全員命からがら島に上陸する。だがその嵐は一行の到来を知ったプロスペローが魔術で起こした嵐だった......。




 シエイクスピア全37作で最後から2番目の36作目にあたる芝居、最後のロマンス劇、素晴らしい舞台と音楽、そして空気の精エアリエルと3人の女神たちの踊りは美しく夢のようでした。怪物キャリバンと道化の二人も生き生きとしていました。文学座の櫻井さん熱演でした。
 この芝居、なんといっても美しい娘ミランダのセリフです。松岡和子さんの訳はとても新鮮でした。ミランダは父とキャリバン以外の人間を見たことはありません。悪巧みを図ったアントニーやアランゾ-達をみて語るのです。
 
ああ、不思議!
こんなにきれいな生きものがこんなにたくさん。
人間はなんて美しいのだろう。ああ素晴らしい新世界
こういう人たちが住んでいるの!


なんと素晴らしい!
キラキラと輝くミランダの瞳がとても素敵でした。
この芝居は
許し!
東京観劇ツアーの3作品に共通するテーマなのか・・・

プロペスラー 追われたミラノ大公 古谷一行
アントーニオ その弟 簒奪者 長谷川初範
ミランダ プロペスラーの娘 高野志穂
エアリエル 空気の精 碓井将大
アロンゾー ナポリ王 田山涼成
セバスチャン ナポリ王の弟 羽場裕一
ファーディナンド ナポリ王の息子 伊札彼方
ステファーノー 賄い方 櫻井章喜
道化 野間口徹


新国立劇場中劇場は2つの舞台形式があります。
前舞台も奈落になっています。
今回の舞台はオープン形式で
私たちは上手前列から2列目のグッドな席でした。


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