『ウインズロウ・ボーイ』 

観劇記 あまご 
2015年4月17日 
 
          作:テレンス・ラティガン
          翻訳:小川絵莉子
          演出:鈴木裕美
          新国立劇場 小劇場

                   


 この作品は20世紀のイギリス演劇を代表する劇作家、テレンス・ラティガンが、今から70年前の1946年に発表した作品です。舞台は更に30数年遡った第一次世界大戦前夜のウインズロウ一家の居間で展開します。あらすじはパンプレットから

 第一次大戦前夜のロンドン。ウインズロウ一家は、銀行を退職した父アーサー(小林隆)、母グレイス(竹下景子)、婦人参政権論者の長女キャサリン(森川由樹)、オックスフォード大学生の長男デッキー(渋谷龍生)、海軍士官学校で寄宿生活を送る次男ロニー(近藤礼貴)の5人家族。
 今日はキャサリンの結婚が決まる日。そこへロニーが一通の手紙を持って突然帰って来ます。校内で5シリングの窃盗を働いたため退学に処す、という内容でした。「僕はやってない!やってないんだ!!」無実を訴えるロニーの言葉に、父アーサーは息子の名誉を守るため決心をします。それはウインズロウ家の人々だけでなく、世論をも巻き込む大きな論争へと発展して行くのでした。

 アーサーは息子を信じて、著名なサー・ロバート・モートンに弁護を依頼することを決心します。モートンはどちらかといえば体制側の弁護士でしかも高額な弁護費用が掛かります。モートンとは敵対する立場に立つキャサリンは大反対ですが、アーサーの決心は変わらず、やがて、ウインズロウ家に現われたモートンはロニーを鋭く尋問します。誘導じみた巧みな尋問、幼い少年ロニーは動揺し混乱しながらも懸命に答えます。激しい尋問に抗議するキャッサリン、そしてあまりの激しさにアーサーも動揺・・・やはりロニーは偽っていたのか・・・・
 1幕のラスト「この子は明らかに無実だ。弁護は引き受ける」暗転、モートンの意外な言葉に観客席は凍りつきました。この芝居どう展開するのか・・・・10分間の休憩です!

 2幕が始まりました、モートンは海軍当局を追い込んでいるようですが、当局もしぶとく、ウインズロウ一家も資金的に苦しくなります。デッキーは大学を止めて銀行員に、キャサリンの婚約者ジョン(川口高志)との仲も微妙に変化して行きます。
結審の場、舞台はウインズロウ家のままです。裁判の模様は女中のバイオレット(渡辺樹里)が頻繁に報告に来ます。彼女は新国立の演劇研究所の修了生で、非常にコミカルな演技で会場が湧きます。キャサリンを慕う若手弁護士デズモンド(チョウヨンホ)も修了生、脇を固める修了生達の演技も光りました。
 そして終幕、モートンが最高裁判所長官への就任への誘いを断って弁護を続けていたことを知り、キャサリン達は深く感動します。このことは歴史的にも事実であったそうです。ロニーの無罪を勝ち取ったモートンの言葉、はっきりと覚えていませんが確か、「正義のため、真実のために戦った」と、とても嬉しく思いました。3時間に及ぶ大作でしたが、疲れることなく、いい芝居をみた満足感に溢れ、東京観劇旅行の一日目が終了しました。今日(4/26)が千秋楽、今宵はさぞかし華やかな打上になるのでしょうね。




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