『獅子』 

観劇記 あまご 
2015年9月9日 
 
          作:三好十郎 演出:原田一樹 劇団文化座 

                   
関西では上演の機会が少ない
三好十郎の作品
北九州市民劇場の御好意により見て来ました。

今月の神戸演劇鑑賞会の例会は
俳優座公演、斉藤憐作の「春、忍び難きを」
「春、忍び難きを」は終戦直後の農村を描いた芝居
敗戦により満州から引き揚げてきた家族も登場しました。
農地改革をはじめとする農村社会の戦後の混乱の中で
右往左往する男たち
したたかに生きる女たち
見応えのある芝居でした。
良知さん演ずる庄屋の望月多門
好演でした!

そして
偶然にしてこの作品も
農村を描いた芝居
時は少し遡って戦中

舞台は
列車が通過する轟音と共に始まりました
場内を揺るがすような列車の響きがしばらく続き
やがて遠ざかって行きます。
去ってゆく列車を見送っているのか
舞台の上手に美しい娘が立ちすくんでいました。
ぼんやりと無言のままで
列車が去ったあとも
娘はまるで夢を見ているように遠くを見ています。
不思議な沈黙がしばらく続きました。
この娘、名は雪といい
意に沿わぬ結婚を母親から仕向けられているのでした。



やがて
村を捨て新天地満州に旅立つという青年 馬場圭太郎
お別れの挨拶にやって来て
明るい圭太郎と
無表情で無口な雪
二人の関係は?



圭太郎は去って行きす



静かな舞台
透き通るような雪の言葉
残響音0.9秒という北九州芸術劇場中ホール
良い舞台を良いホールで
とても贅沢な気持ちになりました。
ここまでは
二人関係がさっぱり分かりません

頼りなさそうな没落地主の父親吉春
吉春の尻を叩きながらたくましく生きてゆく母紋

圭太郎が去った後
父と娘の会話から二人の関係が明らかに・・・
最後に
吉春の獅子舞が観たいと・・・

芝居は見えない汽車の轟音で始まり
見えない汽車の轟音で終わりました。
汽車の向かう先にはなにがあるのか
希望なのか不安なのか
両方が入り混じった気持ち
汽車を見送る吉春の獅子舞に泪が滲みます。




1時間半の短い芝居

素晴らしい舞台でした。

北九州市民劇場の方にお礼の挨拶して
劇場をでると




そこはすっかり別世界
今日は重陽の節句です。

舞台写真はパンフレットから

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