『夜への長い旅路』 

観劇記 あまご 
2015年9月26日 
 観劇記   
          作:ユージン・オニール 演出:熊林弘高  梅田芸術劇場 

                   
 オニールの芝居を観るのは初めてです。学生時代、オニールはとても人気があって、自由を求めて放浪する作家という印象が強かったのですが、この芝居はオニールの自伝的ともいえる家族の辛い物語。昔、「レッズ」という映画があって、ジャック・ニコルソンがニヒルなオニールを演じていました。あの頃いくつかの作品を読んだはずですが、いまではすっかり忘れてしまいました。ただ、最近、おしゃべり新劇史の戯曲を読む会で「楡の木陰の欲望」を読んで感動しました。ヒロイン・アビーは2004年に寺島しのぶさんが演じたそうです。そして。オニールのもうひとつの名作「喪服の似合うエレクトラ」は大竹しのぶさん。2000年に上演された「夜への長い旅」のメアリーは三田和代さんが演じています。そして、今回のメアリーは麻美れいさん、オニールの作品には華のある女優さん達が出演します。多分、女優さん達にとってオニールは魅力的な作家なのでしょう。
 ところで、今回の舞台は、正直いって、少々不満でした。役者さん達は懸命に演じていたように思うのですが、役者さん間の気脈というかアンサンブルが弱いように感じました。はじめて見るオニールの芝居ですから、かなり期待していて、期待しすぎたせいもあるかもしれません。原作で5時間以上の芝居を2時間30分で切り上げたのも無理があったのかな?とも思います。
 
 パンフレットにはユージン・オニールと『夜への長い旅路』と題して、こんなことが書かれていました。
 1953年、肺炎で65歳の生涯を閉じるまでに、彼の人生には常に「病」と「死」の影がさした。青年時代の自殺未遂に、過度の飲酒と断酒、結核の罹患経験。生前はパーキンソン病と誤診されていたが、死後に脳細胞委縮症と判明した老年期の深刻な心身機能低下。自分のことばかりでない。実兄はアルコール依存症の末に悲惨な死。長男は自殺、手首を切って。長女次男とは最後は絶縁状態。数々の家庭内不和に、3度めの妻の薬物依存に関する法的なトラブルもあった。繊細な神経は絶えず暴風にさらされていた。
 『夜への長い旅路』の各登場人物設定やエピソードは劇作家の実人生とかなりの部分で一致する。・・・1941年に書き上げていたオニールは、この戯曲の写しを封印してランダム社の金庫に保管し、自分の死後25年間の出版、およびその後の一切の上演を禁じた。唯一の遺産相続人だった3度目の妻カルロッタが禁を破った。作家の死後2年後の1955年、イェール大学出版局から戯曲が出版され、翌1956年、スェーデンの首都ストックホルムにある王位ドラマ劇場で、舞台が上演される。この劇作家をノーベル文学賞で讃えた国は、その最高傑作の世界初演を、称賛とともに迎え入れたのだった。
 
  オニールは今は亡き家族に対して「深い憐れみと理解と寛容を持って」この作品を書く決意し、この自伝劇によって哀しみの過去から解放されたと、妻への献辞の中で明かしている。この作品は「血と涙で書かれた古い悲しみのドラマ」であり、この脚本を読んだとき、その悲劇性ゆえに気が動転し、涙が止まらなかったと妻カルロッタは告白している。
 機会があれば戯曲そのものを読んでみたいし、もう少し小さな劇場で上演されるのであれば、是非もう一度見てみたい。と思う芝居です。
 


メアリー 麻美れい
ジェイムス 田中圭
エドマンド 満島真之介
ジェイムズ 益岡徹



すざましい兄弟げんかでした
一緒にみた3人の女性は兄弟の争いは
愛と憎しみの裏表だと言っていました。


写真はパンフレットから


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