『トイレはこちら』 

観劇記 あまご 
2016年2月11日 
 
          作:別役実 演出:伊藤侑美 劇団どろ公演 

                   
 別役実の世界に引き込まれたのは2013年の夏、今は亡き深津篤史演出による『象』を見てからでした。それまで何作か見たことはありましたが「不条理劇は解らん???」 そんな思いが強すぎたせいかもしれません。
 その後、ベケットの『ゴドーを待ちながら』を読んで、解らんながらも感動し、別役実の「春夏秋冬」や「ねこふんじゃった」とか「マッチ売りの少女」など不思議な世界に引き込まれ行きます。昨年の俳優座:眞鍋演出による『崩れた風景』を見て、いっそう別役ファンになってしまいました。  昨年は別役実フェステバルが東京を中心に開かれました、今年も続いていますが、本公演もその流れかな?と、劇団どろの合田さんに聞いてみましたが、そうではないとのこと・・・そういえば劇団どろはブレヒト芝居だけでなく、別役芝居もよくやっていますね。一昨年の「いかけしごむ」はちょっと不気味でしたけど・・・今回の「トイレはこちら」はコミカルで楽しめました。 



 前座は団塊トリオYOH23によるハーモニカとギターによる懐かしの演奏、「雨にぬれても」「五番街のマリー」「悲しき雨音」など15曲、若き日のあの頃を思い出しました。楽しそうなおじさん達、芝居であれ音楽であれ、創造できることは素晴らしいことです。ちょぴり羨ましく思いました。

 さて、「トイレはこちら」、劇団どろの女優:今野康子さんと、同じく劇団どろの男優:北勝成さんによる二人芝居です。首つり自殺を目論む女とトイレのガイドでお金を稼ごうとする妻子ある男とのデイスコミニュケーションプレー。トイレを捜して公園にやってくる人に「トイレはそこです」と教えることで100円を頂こうと考える男に、それは非現実的で無意味だと諭す自殺願望の女との繋がらない会話がとてもおもしろく魅入りました。何処か、今の状況を示しているのかも・・・今から25年前の作品だそうです。
 そういえば、20年前のあの頃、震災直後はみんなで助け合いました、励まし合いまいた。言葉に思いがありました。悲しいできごとだったけど、ひよっとしたら人間らしい未来がくるかもしれないと思ったあの頃・・・世の中の大きな流れはそうでなかったのか、それとも今は流れの淀みの中にいるのか・・・

 芝居のラストはなぜか幸せを感じる場面でした。100円を受け取った今野さんの複雑な表情にこの芝居の魅力が託されていたように思いました。今野さん北さん、見応えのある芝居でした。次回も楽しみにしています。

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