『松岡和子 夏の夜の夢 レクチャー』 |
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2016年4月5日 西宮芸術文化センター |
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松岡和子さんの『夏の夜の夢』のワンコイン・プレ・レクチャーを聞いてきました。 オペラ「夏の夜の夢」のためのオペラ予習だそうです。 今年はシエイクスピア没後400年、 一昨年は生誕450年で「お気に召すまま」「ハムレット」「ベニスの商人」 「テンペスト」「リチャードU世」「恋の骨折り損」「タイタスアンドロニカス」 と 朗読劇を含めて7作品 昨年は「トロイラスとクレシダ」を見ました。 今年はどんな作品が上演されるのか楽しみです。 『夏の夜の夢』を最初に観たのは1981年8月大阪例会 アテネの公爵と妖精の王は立花一男さん アマゾンの女王と妖精の女王は辻和子さん 共に二役です。 妖精パックは中村美苗さんでした。 そして2003年5月に神戸例会で ベリャコビッチ演出によるモスクワ・ユーゴザーパド劇場が来日 ロシアの俳優さん達の大胆な演技に圧倒されました。 松岡さんのレクチャーはこれまで上演された『夏の夜の夢』の映像を交えてのお話 演出家の思いの違いがよく分かりました。 作品がどれだけ理解できたかは?です。 松岡さんのお話を聞いて 世界中の演出家たちがシェイクスピアを通じて 自分たちの世界をなんとしても作り上げたいという思いがよく伝わります。 それだけシェイクスピアの世界は奥が深いのでしょうね。 トルストイは貶しているそうですが・・・ レクチャーの構成です。 |
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1.『真夏の夜の夢』の世界とは @構造的には表裏背中合わせになった二つの世界 人間界と妖精界 宮廷と森(街と自然) 昼間の現(うつつ)の世界と夜の夢の世界 意識の表層と深層 ・時間軸でみると 第1幕 人間だけの世界(宮廷、昼) 第2幕〜第4幕第1場 妖精と人間(森、夜、眠りと夢) 第4幕第1場と2場 人間(森、朝、目覚め) 第5幕 人間(宮廷、夜) ラスト 妖精たちによる人間への祝福 ・登場人物達 大人の宮廷人:シーシアス公爵、アマゾンの女王ヒポリタ 若い恋人たち:ハーミア、ライサンダー、ヘレナ、ディミートリアス 職人たち:大工、機屋(はたや)のボトム、指物師、ふいご直し、鋳掛屋、仕立屋 妖精たち:王オーベロン、女王ティターニア、パック、その他の妖精 特別な二人:人間界と関わるパックと妖精界と関わる機屋ボトム |
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第1幕2場から登場する職人たちは庶民の世界です。 シェイクスピアの作品には道化とか庶民の気持を代表する人たちが出てきます。 機屋のボトムは松岡さんの学生時代の 初舞台・初めての役だそうで特に熱がこもっていました。 確か ボトムはパックの魔法によってロバにされ ティターニアが眠りから覚めたあと 最初に見たものに恋するという魔法の薬をパックに飲まされ ボトムと交わるシーンがありました。 この辺りも庶民の喝采を浴びただろうと思います。 レクチャーの後 なぜボトムはロバにされたのか 馬や猿でもよかったのでは?という質問がありました。 松岡さん曰く ロバは精力を表す動物だそうです。 先月「リヤ王」を 安西さん・小田島さん・松岡さん訳の読み比べを一部ですがしてみました。 松岡訳はリアリティがあるというか大胆ですね。 そして |
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Aテーマは崩れかけた愛(信頼と想像力) 外圧:戦争・親の反対 内圧:喧嘩、心変わり B雰囲気 祝婚、祝祭。夏至の祭そして不気味さ 2.様々な演出家による舞台 @ピーター・ブルックによる衝撃的な舞台 ・一人二役による革命的な配役 公爵=妖精の王 女王=妖精の女王 ・言葉のリズム ・かってない程のシンプルな舞台 |
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ピーター・ブルックによる初演は1970年、 日本で彼の「なにもない空間」が1971年に出版されました。 俳優座の「ハムレット」をみたのは1971年4月 舞台にはパイプで組み立てられたジャングルジム ハムレット(山本圭)がパイプの梯子を駆け上ったり 回転したりスピード感のある動き ブランコにも乗っていたような記憶も? そして セリフセリフセリフ 白と黒のシンプルな衣装 まさにピーター・ブルックのいう「何もない空間」 こんな舞台があるのかと それは衝撃的な舞台でした。 ピーター・ブルックによる舞台映像 舞台には一面の白い壁 壁の中から役者達が現われ、壁の上にも舞台がありました。 妖精たちが天から舞い降りてくるための舞台。 演出:ピーター・ブルックによる舞台 当時(1973)神戸国際会館でも上演されました・ ピーターの演出は驚くほど抽象化されていて ロバにされてしまった機屋ボトムをどう表現するのかも楽しみの一つだとか 松岡さんのレクチャーは次々に現われる映像によって 演出家たちの舞台が紹介されました。 |
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・串田和美演出: 現代的な演出、ロバに変身させられた機屋ボトムがリアル、ピータ―演出と異なり具象化されています。 ・森新太郎演出: 劇団昴の故西本裕行が演じる老いた妖精パックが実に滑稽、パックはいたずらで可愛い妖精の概念を見事に打ち破っています。しかし、西本さんのパックもなかなか可愛い! ・蜷川幸雄演出: 真っ白な砂を敷き詰めた日本的な石庭が舞台、パックは京劇俳優が演じ、石庭の床から飛び出し軽やかに舞う、床の穴に隠れ、違った穴から飛び出し不思議な世界に引きずり込んで行く。西洋の妖精や魔女たちは天から舞い降りるのに、日本は地の底から現れると、なるほどそうですね。女王タイテーニアを演じたのは白石かよこさん、巫女のような衣装で強い女王を演じていたそうです。蜷川演出は、ちょっと過激で引いてしまうのですが、なんだかとても見たくなりました。 |
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話はそれますが 蜷川演出による「リチャード二世」が2月に再演され 今月号の雑誌「悲劇喜劇」で絶賛されていました。 蜷川さんが指導する若者の埼玉ネクスト・シアターの公演に お年寄りのゴールド・シアターが大々的に加わり 総勢60余名 ネクスト・シアターの俳優たちがゴールド・シアターの俳優たちの手をとり 一斉にタンゴを踊り始めるという びっくりするような仕掛けがあったそうです。 しかも和服でタンゴ!見たかったです。 蜷川さんは体調が悪く車椅子生活だそうです。 今回のリチャード2世もゴールド・シアターの皆さんも車椅子 今年の夏には「尺には尺を」の大阪公演もあるようです。 蜷川演出によるシェイクスピア 今年の夏の夜の楽しみとなりました。 レクチヤーのあと質疑応答。 三人の女性の質問でした 皆さんシェイクスピアに対して深い造詣があるようで 答える松岡さんも嬉しそうでした。 久々に知の世界に触れ充実した一日でした。 |
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