『先生のオリザニン 観劇記』 
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観劇記 あまご 
2016年6月5日
オリエンタル劇場 
 
          作:堀江安夫、演出:眞鍋卓嗣 俳優座公演 神戸演劇鑑賞会6月例会 

                   

 2年ほど前に見たのですが
ずい分と印象が変わっていました
舞台の装置も
芝居を見終ったあと
眞鍋さんがロビーにいらしたので
「ずいぶん前と違った感じですね」と問うと
『演出もかなり変えました・・・』と
なるほど
「舞台の下手にあった須磨子部屋がなくなりましたね」と問うと
『舞台の制約があって置くことが無理でした』と
前回の須磨子部屋の発想には驚きましたが
今回は広い空間に須磨子さん(有馬理恵)がのびのびと現れて
チリンと鈴をふる
これも良かったと思いました

この芝居はビタミンB1を世界で初めて発見し
脚気病の予防薬を作った
農芸化学者・鈴木梅太郎の物語です。
鈴木梅太郎の恩師古在由直を加藤剛さんが演じ
青年時代の鈴木梅太郎を加藤頼さんが
晩年の梅太郎を再度加藤剛さんが演じるという
親子2代による配役です。
梅太郎の妻・須磨子は有馬理恵さん
加藤親子のお嫁さんです。

2年前とかなり印象が違ったと思うのは
戦争や権力に対するとらえ方です
学問は誰のためにあるのか
足尾銅山の公害に対する権力との戦い
権威のために存在する医学界の保守性
時代に流されてゆく理化学研究所

戦後70年の節目に起きた様々な出来事
ひたひたと迫る恐怖
今は戦前だとシールズの青年が言ってましたが
私も同感です
こうした切羽詰まった状況が
私の眼や耳を心を舞台に引きずり込んだのかもしれません

芝居の最終日は友人と待ち合わせ
舞台の搬出をお手伝いすることになったので
ロービーで台詞を聞いていました
台本も前と変わっていない?
と俳優座の制作の方に聞いたら
「ほとんど同じですよ、ただ1ページだけ差し換えられました」と
「最後のセリフも同じです」

最後の場面は
最愛の娘が突然亡くなり舞台転換
暗闇の中で舞台装置を移動する役者さん達の
声なきレクイエム

やがて
梅太郎・須磨子夫妻がなにもない舞台に現われて
明るいホリゾントの前で思い出を語り合う
亡くなった娘のこと
これから戦場に向かう青年達に
生きて帰って欲しいと
年老いた梅太郎先生が呟く

暗転

素晴らしい舞台でした

超まじめな鈴木梅太郎を演じた加藤剛・頼さん親子の力演
その妻須磨子を演じた有馬理恵さんの明るさ
須磨子の父・建築家の辰野金吾を演じた河野正明さん
その妻 斉藤深雪さん
足尾村の村長や理化学研究所の所長他を演じられた中吉卓郎さん
俳優座のベテラン俳優陣に混じって
若い俳優さん達も大活躍でした

舞台の搬出が終わり引き揚げようとしたとき
俳優座の若手がずらりと正座され
一人一人が(10人でしたか)
「神戸での三日間の公演ありがとうございました」
と三つ指ついて挨拶されました

これには私たちも突然のことで
感激しました!

皆さんいい役者さんになってください!


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