『尺には尺を』 
Masao'sホーム  
観劇記 あまご 
2016年6月24日 
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 
          作:シエイクスピア 演出:蜷川幸雄 演出補:井上尊晶 
                       翻訳:松岡和子 
                          
                   


蜷川さんが亡くなったのは前月5月12日
蜷川さんの芝居はいくつか見ましたが
ドバっと派手な演出でちょっとしんどい感じがありました。
しかし
高齢者演劇集団「さいたまゴールド・シアター」や
若手俳優育成の「さいたまネクスト・シアター」を立ち上げるなど
演劇人として尊敬していました。
残念です
追悼公演の気持で観劇です。

「尺には尺を」は一昨年、シエイクスピア生誕450年を記念して
文学座が上演しましたが
チケットが取れなくて
少し悔しい思いがありました

今年もシェイクスピア没400年
ひとつの区切りの芝居です

舞台はシンプルでしたけど豪華でした
そして
蜷川演出としてはオーソドックスな芝居
演出補の井上尊晶さんの想いによるものかもしれません
演出としておもしろかったのは
イザベラ(多部未華子)が兄を助けるために
アンジェロ(藤木直人)を説得する場面
紗幕を挟んでの戦い
怒りで紗幕を叩き斬るイサベラ!
アンジェロもまたイサベラを愛してしまった動揺から紗幕を引きちぎる
多部未華子の凛とした台詞に圧倒されました。
アンジェロが兄の命と引き換えにイサベラを誘惑しますが
からだを汚すぐらいなら兄が死ぬ方がましだと
言い切りましたね
多部未華子さん見事でした

そしてさらに
面白かったのは
役者さん達が客席から現れ
客席に去って行く
イサベラの兄クローディオ(松田慎也)の友人である
ルーシオ(大石継太)が客席から飛ばす放埓なやじ
舞台と観客が部分合体して楽しめました
大石継太さんやポン引きのポンピーを演じた石井愃一達ベテランはうまい
脇がしっかりしていると芝居もより楽しめます。
公爵の代理人アンジエロはもっと悪役ができる役者さんの方がよかったのでは
藤木直人はものたりない
なにせ持参金を失った恋人を足蹴にして
絞首刑に処するクローディオの妹を誘惑するぐらいですから
冷徹な男
悪の魅力が出せる岡本健一・・・どうかな
クローディオも恋人の持参金を吊り上げようと婚期を延ばしていましたから
こちらも小悪ですが役の雰囲気はあっていました。

?ついでに
戯曲を読んだときは
公爵はもっと若い人でイサベラと結ばれる・・・と
想像していたのですが
わたしの勘違いだったのか?
でも
公爵の威厳とか修道士の仮の姿の役はとても上手で
さすが萬長さんと
思いました
最後のイサベラへの求愛ははぐらかされたような感じでしたね
全てのカップルが「お気に召すまま」のように
めでたしメデタシとならぬところが
この芝居の面白さかもしれません
そして思うに
余韻を持って小屋から静かに去りたいと願う
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティです

 

ページTOP

Masao'sホーム 観劇記