『DISGRACED 恥辱』 
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観劇記 あまご 
2016年10月1日 
 
          作:アヤド・アフタル 翻訳:小田島恒志、小田島則子
          演出:栗山民也
          出演:小日向文世、秋山菜津子、安田顕、小島聖、平埜生成作 
                   
パキスタン系アメリカ人弁護士アミールは(小日向)は
美しい妻・画家で白人のエミリー(秋山)と
ニューヨークの高級アパートで暮らしている
企業弁護士として絶好調

上半身はスーツ下半身はパンツ姿のアミールをモデルに
エミリーは「フアン・デ・パレーハの肖像」を模している。
「フアン・デ・パレーハの肖像」は
メトロポリタン美術館にあるベラスケスの作品
フアン・デ・パレーハはベラスケスの奴隷でムーア人
ムーア人とは北西アフリカのイスラム教徒で
7世紀以降はイスラム教徒全般を示すそうです。
シェイクスピアの黒人将軍オセロもムーア人でしたね。
タイタスアンドロニカスに出てくるタモーラの愛人エアロンもムーア人でした。
芝居の初めに何でこの絵が出てくるのか不思議でしたが
悲劇の運命を負っていることなのでしょうか
それとも白人社会への忠誠を表しているのでしょうか



「フアン・デ・パレーハの肖像」

突然
アミールの甥エイブが飛び込んできます。
自分たちの指導者を助けて欲しいと
アミールは拒否するのですがエミリーは助けるべきだと
結局は尋問に立ち会うことに
翌日の新聞記事にはアミールの言ったこととは異なる記事
弁護士事務所の名前まで・・・
アミールの人生は狂い始めます。

壁にかけられたエミリーの作品が美術館に展示されることになり
美術館に勤めるユダヤ人のアイザックと
アミールと同じ弁護士事務所に勤めるアイザックの妻ジョリー(小島聖)

迎えてのお祝いの夕食会が開かれます。

お互いの宗教観
様々な出来事が絡みあい
アミールは泥酔状態になって行きます
宗教は私にはさっぱり分かりませんが
アメリカという白人社会を頂点とした競争社会の中で
宗教や人種が異なる人たちが生きてゆくことは
とても大変だということは分かりました

仕事を失い
妻も去り
明日はこのアパートから出て行かねばならない
残されたアミールの肖像画
絵を抱きながら床に崩れて行くアミール
悲しいけど
まだ望みはあります。

先月の東京演劇アンサンブル公演「ミラー」に寄せられた岡真理さんの言葉

暗い獄につながれながら
それでも人間は
一粒の麦が死んだあとに谷間のすべてが麦の穂で黄金の海源になる
そんな世界を想像することができる
・・・
希望は人間の中にある
人間だけが希望だ


宗教や人種の差別のない世界
戦争や資本による競争のない社会
多数の中に漂い希望を失った人々が一粒の麦になること
それが希望

難しい芝居でした
 

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