『かどで/舵』  文学座アトリエの会
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観劇記 あまご 
2016年12月9日 
 
          作:久保田万太郎 演出:坂口芳貞(かどで)・五戸真理枝 

                   


しっとりとした芝居でした

文学座を創設した三人
岸田國士、岩田豊雄、そして久保田万太郎
岸田國士作品は見たり読んだりしたことはありますが
久保田万太郎作品は初めてです

東京下町に生きる袋物職人の世界を描いた二つの作品
「かどで/舵」

手作りから機械化へ
時代が移り変わる中で生きる人達
寂しさの仲にも暖かい情が流れる下町の世界にほろりとしました。

文学座のアトリエ
小さな空間に畳が敷き詰められ
職人たちが世間話をしながら袋物を作っていました。
最初は何を作っているのかよくわかりませんでしたが
それは革袋です
昔、皮製の煙草入れ等ありました
久保田万太郎さんの実家が袋物の製造と販売を営む商家だったそうです。

舞台は畳が入れ替わり居間の場面に転換
(写真上)
夫が組合の運動に加わったため職場を追われ
乳のみ子を抱えて北の地に旅立たねばならない元女中が
お別れの挨拶にやってきます。
年季明けの職人のために用意した御膳を
旅立のお祝いに女将がすすめます
名越志保さんの凛とした姿に滲むような優しさが出ていました


                 2017年文学座カレンダーより

舞台は再度畳が入れ替わり細工場の場面に
世間話の後
仕事を終えた職人たちが将棋をさしたり風呂に出掛けたり
やがて一人去り二人去り
ひとり残った職人
今日は徹夜の作業とか
そこに
これからは機械化の時代になるとおかみの息子から聞いた
若い職人が肩を落として帰ってきました
今日は晴れて年季があけて独り立ちする彼の祝いの日でしたのに

移りゆく時代の中での二組の門出が描かれています

一人黙して
たんたんと作業を続ける職人
舞台の灯りが消えてもその姿はいつまでも心に残りました

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舵も袋物職人の家を舞台とした作品でした
浅草の三社祭の日
実業家の家に嫁いだ姉が久々に実家に帰ってきます
袋物職人の長男良吉の嫁と次男は居るのですが良吉は留守
やがて酔っぱらった良吉が見知らぬ若い夫婦を連れて帰って来ました
この若い男は良吉と意外な関係がありました
三社祭の鐘や笛の祭囃子が現われ
舞台の天井裏からも太鼓が打ち鳴らされます
東京下町の情緒たっぷり
姉・山本郁子さんの昭和モダンガールがあでやかでした


                   2017年文学座カレンダーより

久保万太郎の世界にじっくり浸ってしまいました。


 

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