『天使も嘘をつく 観劇記』 
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観劇記 あまご 
2016年12月11日 
 伊丹アイホール
          作・演出:坂手洋二 燐光群 

                   
坂手洋二さんという劇作家を知ったのは
芝居好きのまりさんに
燐光群の芝居を誘われたのがきっかけでした
最初の舞台は
2008年7月尼崎のピッコロシアター
燐光群と占部房子さんによる
「ローゼ・ベルント」
とても衝撃的な芝居でそれ以来
燐光群の魅力に取りつかれました
そして毎年のように
ここ数年は12月のアイホールでの公演を楽しみにしています
燐光群の芝居は劇団員が全員総力挙げての舞台造り
知らず知らずのうちに
役者さん達と馴染になってしまいます
一緒に食事してもらうこともありました

また
坂手さんは現代というか
今起きていることを描いてくれる数少ない作家の一人です
最近
若い劇作家
中津留章仁さんを知りました
彼もまた
今起きていることを描いてくれる数少ない作家の一人です

今年の12月には二人の芝居を観ることが出来ました
勿論、別々な芝居ですが
共通テーマは「沖縄」です

今、沖縄で起きていることが沖縄だけのことでなく
日本中にとってとても大事なこと
しっかりと見つめ考えて見なければ
二人の作家が
私たちに芝居を通じて熱き想いを語ってくれました



さて
「天使は嘘をつく」

燐光群と竹下景子さん
2010年12月の「3分間の女の一生」いらい
久々の登場です

舞台は
日本の西南端のとある島
その島の塩田跡地にメガソーラー誘致計画があり
電磁波の発生など公害問題に反発して
主婦たちを中心とした反対運動が起きていました
主婦たちの招きで
映画監督のヒロコ(竹下景子)とカメラマンのシロサキ(猪熊恒和)が
この美しい島を訪れます
ヒロコは
「天使も嘘をつく」
という地球外生命と闘う天使の映画を製作していましたが
主人公の女優マナ(馬渕英里何)が撮影中に
パラグライダーで事故死して
映画は完成しなかった
ところが
島にはなんとマナそっくりのサユリという反対派の女性がいたのです
反対派には市会議員のサトコ(円城寺あや)
ヒロコのファンである映画館主タイラ(大西孝洋)達も

反対運動を通じて真実が明らかにされてゆきます
メガソーラー計画のための用地買収は
自衛隊のレーダー基地建設が目的だったと・・・
このように目的を隠蔽して計画を実行することは
よくあることらしいです
リニヤ鉄道がアルプスを貫通するトンネル計画
トンネルのさらに下に
核廃棄場所を作っているのではないかと
疑いたくなります
仕事に使うにしても景色の見えない列車の旅は不安
地震や火山爆破の多い日本列島
はたして安全なのだろうか・・・と
不安な事業に大金をつぎ込むことの不自然さが
新たな疑惑を呼び起こします

沖縄の高江や辺野古にしても
基地を縮小するということで新たな基地が作られてゆく
もうこれ以上騙されるのは嫌だ!
そんな思い
芝居を見終って感じました
世の中の空気は重たく暗く希望が感じられませんが
竹下さんと馬淵さんが天使の翼を得て
飛び立とうとするラストのシーン
希望を持たなければ
ちょっと嬉しい気持になりました

パンプレットの中で坂手さんが書かれたB級SF映画のこと
芝居との関連ではよくわかりませんでしたが
冷戦期のアメリカB級SF映画で
片田舎の街が未知の力や未確認生物に支配される恐怖感は
ソビエトとの冷戦や核開発などが背景にあり
冷戦が終結した今は
「次なる脅威」を自ら作り出す時代に突入している

パレスチナ問題・移民問題・民族同士の争い
日本においては尖閣諸島をはじめとする領土問題
隣国間の稚拙な争い
そんな淀んだ空気の中から抜け出したい!
そんな気持ちになります

これからも
毎年燐光群の芝居楽しみにしています


これまで観た芝居の整理です
 
ローゼ・ベルント
戦争と市民
ハシムラ東郷
ザ・パワー・オブ・イエス
3分間の女の一生
推進派
たった一人の戦争
宇宙みそ汁・無秩序な小さな水のコメディー
星の息子
帰還
ここに映画館があった
カウラの班長会議
8分間
屋根裏
お召列車
天使も嘘をつく
2008年7月 尼崎ピッコロ 占部房子
2008年12月 伊丹AIHALL 渡辺美佐子
2009年12月 伊丹AIHALL
2010年5月 大阪精華小劇場
2010年12月 伊丹AIHALL 竹下景子
2011年6月  伊丹AIHALL
2011年12月 伊丹AIHALL
2012年8月  大阪ウィングフィールド
2012年12月 伊丹AIHALL 渡辺美佐子
2013年6月  伊丹AIHALL
2013年12月 伊丹AIHALL 
2014年7月  神戸アートビレッジ
2014年12月 伊丹AIHALL 岡本舞
2015年5月  大阪ウィングフィールド
2015年12月  伊丹AIHALL 渡辺美佐子
2016年12月  伊丹AIHALL 竹下景子 
燐光群の作品は16本、毎年12月は伊丹のアイホールで上演
春から夏にかけて大阪や神戸でも時々見ていました
坂手さんの芝居燐光群以外では2011年6月に劇団民芸による「帰還」
今は亡き大滝秀治さんの最後の舞台でした
坂手さんの夢幻能の世界
思い出深い芝居です
また
神戸演劇鑑賞会では青年劇場による「普天間」2013年10月
を見ています

これからも燐光群:坂手洋二作品を楽しみにしています

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