『砂漠のクリスマス 観劇記』 
Masao'sホーム  
観劇記 あまご 
2016年12月20日 
 青年座劇場 
          作:ジョン・ロビン・ベイツ 翻訳:高橋知伽江 演出:須藤黄英 

                   
今年は東京での仕事が多かったので
たくさん芝居を観ることが出来ました
なかでも青年座の芝居 みな見応えがありました
 
1
2
3
4
5
フォーカード
天一坊十六番
朝食までいたら?
横濱短篇ホテル
砂漠のクリスマス
青年座の芝居
ベテランと若手が上手く溶け込んで
見ていて私も引き込まれてしまいます



「砂漠のクリスマス」
題名から寂しいクリスマスかな?
と想像していたのですが
舞台は大豪邸
映画俳優から転身し
共和党レーガンジュニアのスポークスマンとして活躍した父ライマン(長克己)
元有名シナリオライターの母ポリー(増子倭文江)
民主党支持者でアルコール依存症の伯母シルダ(山本与志恵)
政治に無関心なTVプロデュサーの弟トリップ(久留飛雄己)
そして作家の長女ブルック(安藤瞳)
五人の家族の物語

2004年のカルフォルニア砂漠都市パームスプリングス
クリスマスイブの朝
長女ブルックが6年ぶりに帰って来ました
久々に家族で過ごすクリスマス休暇に話は弾み
穏やかな時間が流れます
しかし
ブルックが”家族のある秘密”について書いた本を
出版すると話始めた途端
場の空気は一変する・・・・

「私したちの家族に起きたこと全部書いた。
だから、心の準備をしてほしかった」

封印した過去、ぶつかり合う家族
そして・・・・ついに語られる衝撃の真実
                              (上演パンプレットより)

次々と事実が明らかにされてゆく芝居の展開
共和党と民主党
事実が公になればとんでもないことになると
慌てふためく父と母
そんなこと関心を持つのはほんの数パーセントにすぎないと
うそぶく弟
確かに世間とはそういうものかもしれない
しかし
真実を語らなければ未来はないとブルックは叫ぶ
そうかもしれないと思う
中途半端な私

ブルックの真実とは・・・・
ブルックの兄が過激派の仲間になり
そのグループが爆弾を投げ込み軍人が一人死亡
家に帰った長男は父に殴られて逃亡
父が警察に通報したため長男は海に飛び込み自殺
愛しい兄を失った悲しみからうつ病になり
母の看病と生活援助のおかげで回復するのですが
伯母から兄と父の経緯を聞き
真実を明らかにするための回想録を書いたと
両親に宣言するのです。
両親は私たちの死後に発表して欲しいと哀願します
しかし回顧録は既に新聞社に渡り
数か月後に出版されると・・・

ここから事実が次から次へと明らかにされてゆきます


パンフレット 稽古場風景より
実はアル中だった伯母は
長男が助けを求めたとき助けなかったこと
父は真実を語り始めます
爆破事件が起きた後長男は家にきて
自分は無関係だと・・・
しかし麻薬とセックスに溺れた息子を救うために
人が死んでいるのだから自首しなさいと説得したのだが
「ベトナムではもっと多くの人間が死んでいる!」
と叫んだため思わず殴ってしまい息子は出てしまった
必死で息子を探したけど見つからず
息子の無事を祈って警察に通報したのだと・・・
そしてしばらくの後
母の元に薄汚れた息子が現われ
母はしばらく息子を車に乗せて匿い
顔や体を洗ってやり新しい服を着せて
長男に遺書を書かせてボロ服を置いて海に入水自殺したように見せかけ
息子を逃がした・・・と

ブルックは回想録の原稿を宙に投げつけて
舞台は薄い白色カーテンで締まります

その後は?

やがてカーテンの前にブルックが現れて
一冊の本を手元に
その後の経緯が語られます

父と母のそばに引っ越しして来て
父と母を見守っていたと
やがて二人は亡くなり
兄も亡くなったと

時がどれだけ立ったのか
いつどうして亡くなったのか
少し聞き取れにくい所もあり
詳しくは分かりませんでした

登場する家族はユダヤ人の一家です
祖国を追われアメリカの競争社会に生き延びるには
相当な努力と緊張した生活があったと思います
10月に見た「DISGRACED 恥辱」も
イスラム系アメリカ人の男と白人の妻
そしてユダヤ人の知人とアフリカ系の妻
アメリカの複雑な民族関係の中から
必死に足場を築こうとする人達・家族の断絶の物語でした

今年はパレスチナやユダヤのことを扱った芝居や本にいくつか触れました

私たちの祖先がどこで生まれどこから来たのか
そのルーツを辿れば
そこに糸口があるのでは
そんなこと思います

この作品はアメリカの劇作家・俳優・TVプロデューサーである
ロビン・ベイツが2011年1月にオフブロウドウェイで上演し
同年11月にブロウドウェイに
トニー賞やピューリッツアー賞にノミネートされたそうです

原題は「Other Desert Cities」
「アザ―・デザート(砂漠)・シテー」
ふと見たら
来年7月に梅田芸術劇場で上演予定です



もう一度
違った気持ちで?見て見ようかな
楽しみです

ページTOP

Masao'sホーム 観劇記