『いつだって今だもん』 
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観劇記 あまご 
2017年01月14日 
 
          作:谷川俊太郎 演出:立見瑛美 劇団どろ

                   


劇団どろにしては珍しい演目
知りませんでした
谷川俊太郎さんが芝居を書いていたとは
谷川さんは有名な詩人ですが
どんな詩を書いていたのすら知りませんでした
「死んだ男が残したもの」
この歌が谷川俊太郎作詞:武満徹だと知ったのも
つい最近のことです
知らないことが多すぎます

死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりのこども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった


芝居もこの詩のように
人類が滅亡の時
最後のひとりとなった娘に残したものは
不思議な母親
死んだ男の残しものは
ひとりの妻とひとりのこどもでした

とても辛いお話のように見えますが
どこか暖かい
SFラブストーリーです

原因はよくわかりませんが
核戦争なのか
女の子は地球最後の一人
母は生まれたばかりの娘のために
父親が作ってくれたロボット
娘が成人するまで育ててくれていたのです

誰もいないデパートに行けば
様々のものが手に入ります
他に誰もいないのですから・・・・
食料は缶詰

フルーツの缶詰を美味しそうに食べていた母が
突然動かなくなります
慌てる娘
今野母ロボ
すごくよかった!

一方
もうひとつの芝居が展開されています
何世紀も遡った時代
退屈な王子さまと愉快な王さま
そして王子に仕える道化

王子様は不思議な歌に惹かれて旅に出ます
道化をお供に

化け物たちと闘いながらやって来たところは
不思議な空間
時空を仕切るその場所には不思議な子供がいました
見えない壁を挟んで
娘と王子様は出会います
二人は一目ぼれ
しかし二人はこの壁を乗り越えることが出来ません
そのときお母さんと道化が現われて
見えない壁を消してしまいます

霧だって雨だって水だもん・・・とうたう子供

過去も未来も
いつだって今だもん・・・

今をしっかり生きる
そんな谷川俊太郎さんの想いが感じられました

王子:ただゆうき(神戸ドラマ倶楽部)
娘:堤和(神戸ドラマ倶楽部)
道化:新井裕也
王:北勝成
子ども:もりあいわ
母:今野康子

演出の立見さんがチラシの中で
谷川俊太郎の詩「20億光年の孤独」のこと書かれていたので
タイトルに惹かれて
谷川俊太郎さんの詩集を買ってきました

詞華集「生きていてほしいんです」には
『死んだ男の残したものは』
『戦争と平和』
『千羽鶴』など谷川俊太郎さんの詩
そして
茨木のりこさんの『私が一番きれいだったとき』
与謝野晶子の『君死にたもうことなかれ』
峠三吉の「にんげんをかえせ』
寺山修二の「戦争はしらない」
などたくさんの詩がありました

「二十億光年の孤独」は自選谷川俊太郎詩集にありました

人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする

火星人は小さな球の上で
何をしているか 僕はしらない
(或いはネリネリし ハラハラしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ

万有引力とは

ひき合う孤独の力である

宇宙はひずんでいる
それ故みんなは求め合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である

二十億年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
                 50.5.1





 

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