『逢坂〜めぐりのめあて』  Ring Bong第7回公演
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観劇記 あまご 
2017年2月8日 
 
          作:山谷典子 演出:藤井ごう
          出演:坂口芳貞、辻輝猛、亀田佳明、長谷川敦央
              もたい陽子、大井川皐月、加藤祐未、山谷典子
          下北沢 シアター711 

                   


あらすじ
豊かな暮らし、幸せな暮らしを目指して、
誰もが無我夢中で働いた1950年代。
敗戦後の痛みを忘れようとしていた1954年、第五福竜丸事件が起こる。
ヒロシマ、ナガサキだけではない生活の隣に来た被爆という現実。
日本全国で反核運動が起こっていく。
その裏では、「核の平和利用」を謳い、原子力発電が導入される…。
1945年から1960年、何度もあった歴史の分岐点。
…これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関…
同じ分岐点にいた人間が、それぞれに選ぶ道とは…。
Ring Bongより


同じ坂をのぼり通学していた幼馴染の三人
三人はそれぞれの道を歩き始めた

ひとりは女学校の教師となった安田素子(山谷典子)
第五福竜丸の事件を契機に反核運動の署名活動を行っている

ひとりは大手新聞社主の影武者として
テレビの導入・原子力発電の導入にも対応している
英語は堪能でアメリカの権力の中心人物達とも親交があり
強い反共主義者
目的のためには人を切ってゆく冷淡なところもあるが
女性にもてる柴崎敏之(亀田佳明)

そしてもう1人は
柴崎敏之や安田素子と同級生の藤本慈(長谷川敦央)
日本で初めてのプロ野球選手
出征で前線に送られ肩をやられてしまう
シベリヤ抑留を経て帰国するが野球選手としてはだめになる
前線で手りゅう弾を投げたことが辛い思いでとなり
最後は自殺する

日本新聞の初代社長でプロ野球の日本レンジャーズオーナー
松田勝太郎(坂口芳貞)
テレビの導入・原子力発電の導入も手掛け
名誉欲も強く人の手柄も自分のものとするが
妙な愛嬌があり周りで人々は動いて行く
自分で手掛けるプロ野球の試合を天皇の観覧試合にし
自身のテレビ局に中継させるという野望を果たす

安田修(辻輝猛)
素子の兄
大衆雑誌「主婦と生活」の記者
彼の投書が第五福竜丸の保存運動になって行く
柴崎の謀略に引っかかった素子を
松田の愛人の写真を撮ることで助ける
野球や星を見ることが大好きな正義感溢れる夏子の父

安田夏子(大井川皐月)
修の娘で素子の姪
ミーハーで流行にすぐ左右される女学生

荒木夕子(もたい陽子)
松田の別宅の女中
嶋崎と恋愛関係にあるが嶋崎に利用されつつ
自身も女を利用して生きている

登場人物のプロフィールを
上演台本から書き出しました



ここまで書くとあらかたの筋がみえてくると思います
物語の核となっている人物は松田勝太郎
正力松太郎と重なります
山谷さんも書かれていましたが
第五福竜丸の事件の頃
正力松太郎氏が中心になって「原子力平和利用」キャンペーンがあり
メデアによる世論誘導が展開されてきました
湯川秀樹さんも正力さんに誘われて原子力委員会委員長に就任されましたが
すぐに考え方が違うことが分かり1年後に辞任されました。
手塚治さんの「鉄腕アトム・ウランちゃん」なども
原子力の平和なんです
恥ずかしいことですが
福島の事故が起きるまでは私も原子力の平和利用を信じていました
福島の事故は私も責任があると思っています
いまでは
原発の再稼働は必要ないと思います
どうやって終息させて行くか
そこにお金と知恵を投入すべきだと思います

この芝居は「核」のことと同時に
マスコミの責任についても問いかけています
最近
「ニュースの真相」という映画を見ました
時の権力者によって真実が隠されてゆくことの恐ろしさ
今のアメリカも日本も
肝心なことが曖昧にされ
どうでもよいとまでとは言い切れませんが
そのようなニュースが大切な事実を覆い隠しているように思えます
テレビのニュースは同じことの繰り返し
取材源が同じなんでしょうか
みていると疲れます

こうして真実が曖昧にされているように思います
スポンサーに影響されない雑誌や映画や芝居や本等
こうした文化がもっと豊かに!
そう思います

逢坂〜めぐりのめあて
すこし前の出来事ですが
あらためて今を問う
見応えのある芝居でした
 

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