『わが兄の弟 贋作アントン・チェーホフ傳』 
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観劇記 あまご 
2017年4月16日 
 
劇団青年座 作/マキノノゾミ 演出/宮田慶子
出演/横堀悦夫、安藤瞳、大家仁志、山本隆二、津田真澄、野々村のん、ほか

                   
 マキノノゾミが描くチェーホフ評伝劇、
「かもめ」「三人姉妹」などチェーホフの戯曲の登場人物を思わせる人々が登場し
しかも「贋作」とタイトルが付くように作者が自由に想像の翼を広げている。
特に、チェーホフ最大の謎、サハリン旅行についての独自の解釈が面白い。
舞台は、アントン・チェーホフ20歳の誕生日の翌朝から始まる
兄二人はすでに家を出ており
モスクワ大学で医学を学びながら多数のユーモア短篇小説を雑誌に寄稿し
その原稿料で一家の暮らしを支えていた。
 一幕のニーナと結ばれた朝の弾けるばかりの喜びよう。
こんなチェーホフ見たことない。



二幕
父と二人の兄とのトラブルに困らされながら
家計のためせっせと小説を書くアントン。



三幕
別荘を借り、家主である三姉妹との交流。
作家として医師として安定はしているが
すべてに傍観者のような自分自身に苦しんでいる。



そして四幕
30歳の時、肺結核を患う身でありながら、
一人極東の流刑地サハリンへと旅立つ。
 サハリンでの3ヶ月に及ぶ流刑囚の住民調査。
その最後に会うのは、次兄の元恋人で娼婦
自らの「最初の女性」でもあるニーナ。
彼女の兄は学生運動で逮捕され獄中死
その遺志を継ぎ、革命に身を投じた姉。
ニーナは
逮捕された姉を酷く侮辱した検察官を許すことができず射殺し
シベリアへ流刑となっていた。美しかったニーナの変わりよう
想像を絶する過酷な運命。
二人の対面に息を呑む。
正気を失っているニーナが語るロシアの現状への激しい怒り。
それは作者の今の日本の状況への怒りとも聞こえた。
20歳のチェーホフを演じる横堀悦夫の若々しいこと。
安藤瞳のニーナは軟らかな女性の魅力とどこか影も感じさせ、好演。



大家仁志は、画家で大酒飲み
常識はずれの愛情を弟に注ぐ次兄ニコライと
サハリンの老農夫ポポフの二役を見事に演じ分けた。



とりわけ、三姉妹の長女ジナイーダの津田真澄がいい。
横堀、大家、津田と
『横濱短篇ホテル』の出演者たちが
また違った一面を見せてくれた。  


記 AH
 

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