『故郷』 
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観劇記 あまご 
2017年7月3日 

          原作:水上勉 作:八木柊一郎 演出:黒岩 亮 
               創立75周年記念第2弾 劇団文化座公演149
               池袋 東京芸術劇場シアターイースト
                   


久々の水上勉作品
雁の寺
飢餓海峡
越前竹人形
越後つついし親不知
はなれ瞽女おりん
五番町夕霧廊
など記憶に残る作品です
昔はよく上演されていました
久しぶりです
「故郷」は
水上さんの故郷 若狭を舞台にした芝居
越前・若狭は原発街道と呼ばれるほどたくさんの原発があります




越前出身の宇野重吉さんと若狭生まれの水上さんの対談で
日本海側の越前・若狭は貧しく
豊かな太平洋側の都市の犠牲になっていると・・・
福井・福島も福がつく県ですが
ともに明治政府にさからった親藩・譜代でしたから
冷遇され続けていました
江戸時代は北前船が海上貿易の主流で
酒田を始め日本海側の港は反映し
敦賀や小浜も北前船の寄港地でした
金沢は江戸・大阪・京都に継ぐ大都市だったそうです

この芝居
原発がメインという訳ではありませんが
原発と共に生きてきた人々の生活がしばしば出てきます

あらすじはチラシから
物語 1985年秋。
ニューヨーク在住の芦田冨美子(阿部敦子)は
30年振りの帰国の途中
JALの機内でキャッシー・マイクレン(クリスタル真希)に声をかけられる
「ドゥ・ユーノー・ワカサ?・・・フユノウラ?」
「ワカサ?・・・冬の浦?若狭は私たちがこれから向かう処です・・・。」
冨美子は同乗する夫の孝二(佐藤哲也)と共に
このアメリカ娘の話しを聞くことになった




芦田夫妻のこの度の帰国には
夫の仕事以外に
自分たちの終の棲家を探すという特別の感慨があった
生まれ育った若狭の土に戻りたいと願う冨美子に対し
「廃炉になっても600年も燃え続ける原子炉のそばで眠る気はしない」
という孝二のこだわり
しかし
孝二の故郷丹後もまた
孝二にとっては安住の地ではなかった
若狭の旧家を一人守る冨美子の母クメ(佐々木愛)
人里離れて独居生活を続けるキャッシーの祖父清作(嵐圭史)
やがて登場するキャツシーの母ハツ江(有賀ひろみ)
突然の金髪娘の来訪に
村では住職、駐在、村人たち
この村に嫁いだフィリピン娘まで加わって
波紋はさらに広がって行く・・・・


芦田夫妻は若き頃日本を飛び出して米国で出会い結婚
幸せな生活を送っていたが望郷の念に駆られ
終の棲家を求めての今回の帰国
一方キャッシーの母・ハツ江は渡米して結婚し
キャッシーを生んだ後
しばらくして離婚
日本に帰っていました



キャシーは機中で出会った冨美子からの紹介状を持って
若狭の冬の浦を訪れます
戸惑う村人たちも冨美子の手紙と英語の達者なフィリピン娘の協力もあって
祖父の松宮清作と会うことがことができました
清作はハツ江を許さず頑固一徹な生活を送っていましたが
可愛い孫には心を開いてゆきます
清作の息子・松宮淳二(皆川和彦)の努力もあり
今は再婚しているハツ江とも連絡がとれ
母との再会を果たすことができました

一方
芦田夫妻は孝二の故郷丹後を訪れるのですが
昔の本家との争いや辛い思い出ばかり浮かび
この地を終の棲家とするのを諦めます
そして
冨美子の母親くめが暮す故郷に
くめは独り暮らしですが近くに住む長女が面倒を見ています
久々の親子の再会
とても幸せそうです



故郷では様々の思い出があり
懐かしい出会いがあり
故郷を捨て去ったものとして
涙がこぼれました

貧しさは故郷で生きてゆくことを許さず
残されたものもまた
日々の不安に怯えながら生きてゆく
原爆と異なり
原子力の平和利用を長い間信じていた私も
遅まきながら
あの事故以来信じられなくなりました
都会の豊かさは
貧しい村の犠牲の上に成り立っていると
水上勉さんと宇野重吉さんの対談は
その頃
正直いってよくわからなかったのです
故郷は
やはり祖国を失った人たちの思いとも繋がるように思います
様々な民族の人たちが暮す米国やヨーロッパの人たち
日本で暮らす在日の人たち
そして
故郷がない 祖国がない人達
人類はどこで生まれどこに向かっているのか
忘れないように・・・
この芝居もそう呼びかけているように思いました

写真は上演パンフレットより
 

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