『断罪』 
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観劇記 あまご 
2017年12月15日 
 
          作:中津留章仁 演出:伊藤大 劇団青年座第230回公演 
                                      青年座劇場 
                   


今、最も旬な劇作家は中津留章仁さん
2015年9月19日参議院で安保法制法案が強行採決された時
まさにその時に『そぞろの民』が上演されていました
2015/09/11 〜9/27
東京駅前劇場
トラッシュマスターズ
その事を知ったのはもう少しあと
私達の「おしゃべり新劇史」の勉強会(2016/5)で
テアトロ2016/2の上演台本を読んだ時でした
プロローグはこのように始まります
暗闇の中、国会の特別委員会で、安保法制法案が
強行採決する騒乱の音声が聞こえる。
明かりが入ると、そこは東京の郊外にある
豊島家の居間と台所と廊下


今をこのように鋭く描く劇作家がいたとは・・・・
驚きました
三好十郎の『廃墟』の現代版のような芝居です
そういえば今年は三好十郎の作品もたくさん上演されましたね
私は『その人を知らず』と『冒した者』を観ました
二人の作家は
今に通じる、まさに今を描くという点では一致しています

中津留作品を始めて舞台で見たのは昨年の11月
『琉球の風』 (東演)に続いて2本目です

『断罪』の あらすじ です
中堅のプロダクションに所属する大物俳優が
生放送の番組で現政府を批判し
事務所を去ることになった
彼を担当していた芸能一部の主任・蓮見亮介(大家仁志)は
彼の後を追って独立したかったのだが
家族を養っていくためには事務所に残るしか道はなかった
病気の娘(當銀祥得)がいたからだ
この事件により
所属タレント及び社員の発言と行動に対して
厳しく管理して行くことになった
タレントを商品としてでなく一人の人間としてみて欲しいと考える
蓮見亮介の部下である岸本亜弓(安藤瞳)は訴えるが
取りあってはもらえない


大家さんの最後の舞台でした

岸本は正義を貫くために社内の実体を告発する。
結果
芸能一部は社内的にも社外的にも苦しい立場に追い込められ
かって岸本の同僚であった
モデル部部長・取締役である荒木(石母田史郎)から
岸本を辞めさせるか
もしくは芸能一部の誰かが責任をとるようにと迫られる
岸本は自分の行動は正しいと主張し
同僚たちは生き残るために岸本を非難する
結局
元荒木の上司であった芸能部長の佐久間(山本龍二)が
辞めることを決意した
佐久間は会社内での少数意見を大切にしようと
社長とともに異端児であった荒木を支えていた時期があった
会社における人間関係
自分にとっての正義とは
現代を痛烈に批判する芝居である

芸能一部は新人の俳優である玉木(市橋恵)を売り出すことにした
しかし
玉木にはアイドルタレントの彼氏がいて
会社の方針としては別れさせると・・・
政治的発言は禁止
恋愛も禁止
徹底した管理社会

ところが
本音はどうなんだ
様々な事実が明らかにされてゆく

荒木取締役が言うように
大手の芸能会社が岸本の告発に対して嫌がらせをしているのか
・・・
そんな事実はなくて
全ては荒木の忖度であったことが
ばれる

自由が薄められた管理社会における人間性の否定
今の日本は
そうした方向に向かおうとしているのではないか
中津留章仁の痛烈な想いが伝わってきます

蓮池を演じた大家仁志さんの怒り
山本龍二さんの苦悩



芸能二部主任の津田真澄さんの生活感ある演技



若手の逢笠恵祐・前田聖太
愛らしい田上唯さん

そして
主演女優の安藤瞳さん
青年座の見事なアンサンブルが加わり
中津留作品がいっそう輝いたように感じました

 
蓮見亮介
岸本亜弓
山浦順子
大久保充
西島至
千田茜
蓮見彩
玉城恵令奈
荒木悟
佐久間猛
=大家仁志
=安藤瞳
=津田真澄
=逢笠恵祐
=前田聖太
=田上唯
=當銀祥恵
=市橋恵
=石母田史朗
=山本龍二
写真はパンフレットより

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