「仕事クラブ」の女優たち 
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観劇記 あまご 
2017年12月15日 
 
          作:長田育恵 演出:丹野郁弓 劇団民藝 日本橋・三越劇場

                 あらすじ
 大正から昭和にかけて、新劇という新しい演劇が生まれていた。夢と理想に燃えてはいても日々の暮らしにはまるで無頓着な男たち。『どん底』の巡礼ルカのセリフそのままに「パンがない時には蕪でも食べるよ」と呟いてはみるものの、いかんせん生活できない。そこで立ち上がった女たちが始めた副業の数々…洗濯や家政婦、筆耕にマネキンなんでもござれ。あいつぐ検閲に上演中止、検挙にも事欠かない苦しい毎日の中で、女優たちは芝居に悩み、恋に悩み、貧困に悩み、それでも生きることを諦めないのだった。 (パンフレットより)
 時・ところ
1932年(昭和7年)
一、  
二、  
三、  
四、  
五、  
六、  
七、  
八、  
九、  


2月

3月

4月
5月
5月
9月
12月


築地小劇場第二楽屋
銀座の路上
築地小劇場第二楽屋
築地小劇場
同楽屋
幕内〜舞台
築地署の取調室
築地小劇場第二楽屋
同楽屋


久々の日本橋・三越劇場です
劇団民芸は毎年12月は三越劇場ですね
三越劇場は大阪にも神戸にもありました
今は両劇場ともなくなりました
余談ですが
最近昔の文庫本を開いたら
こんなチケットが挟まっていました



34年前(1983年)の大阪・北浜の三越劇場です
宇野重吉さんと北林谷栄さん
私にとっては宇野さんの最高の舞台でした
懐かしいです

ところで
本日の芝居
1906年(明治39年)坪内逍遥や島村抱月らが文芸協会を結成してから
26年目
1924(大正13年)小山内薫・土方与志により築地小劇場が創設されてから
8年目(1932年2月〜12月)が舞台です
1925年には鈴木商店の倒産により金融恐慌が起きました
1923年は普通選挙法が公布され同時に
治安維持法が公布されました
思想表現の自由が奪われ
経済的にも苦しい時代でした
しかし
貧しくとも夢と理想は明々と燃え
新劇人達の芝居に対する想いは熱いものがありました
このような時代を生きてきた新劇人の想いが
実に生き生きと伝わる芝居でした
登場する青年俳優達は
1929年(昭和4年)の小山内薫追悼公演
『夜の宿(どん底)』の丸山定男演ずる巡礼者ルカに魅せられ
新劇俳優を志したと・・・熱い想いが語られます
配役は
ペペル(薄田研二)、クレシチ(滝沢修)、サチン(青山杉作)
役者(友田恭介)、男爵(汐見洋)、ルカ(丸山定夫)
ワシリイサ(東山千栄子)、ナタアシャ(山本安英)
そうそうたるメンバーですね

仕事クラブの女優たち
ほんとうのことでした
発起人は原泉子(事務)、細川ちか子、戸川静子、高橋豊子
山本安英、沢村貞子、土方梅子



この芝居の中で不思議な存在は
奈良岡朋子さん演じる秋吉延
ふとしたことから楽屋を訪れ
話し込むうちに広島行きの最終列車に乗り遅れ
お世話係として住み込むことに・・・
ひょうひょうとした動きと厳しさ
そして
透き通る声
楽屋の隅に落ちていた本を拾い上げて読み上げる
井伏鱒二の「山椒魚」
岩屋に隠れて何年か経ち
外に出ようとすると頭が出口に閊えて出るに出れない
そこに飛び込んできた蛙とともに諦めて
暮らすことになった山椒魚
閉じ込められた社会の中でもがく人たちの気持を
みごとに表した井伏鱒二の短い小説の冒頭の言葉です
久しぶりに読み直してみた
あの頃は若かった
暗い時代のなかで夢を追いかけながら生きて行った
新劇青年や女優達がまぶしく感じる
いい芝居でした

パンフレットより
秋吉 延
三木淳子(左翼劇場 女優)
江川たまみ(新築地劇団 女優)
新山えつ子(新築地劇団 女優)
中田雪枝(新築地劇団 女優)
生方鈴子(センセイの妻)
五十嵐隼人(左翼劇場 俳優 日プ幹部)
橋本哲郎(新築地劇団 演出家)
夏目隆二(新築地劇団 俳優)
池田実(新築地劇団 俳優
鹿山銀次(魚河岸の魚屋)
尾崎肇(本庁特高テロ係)
私服1
私服2

奈良岡朋子
中地美佐子
藤巻るも
吉田陽子
桜井明美
新澤泉
神敏将
平松敬綱
堺健一
吉田正朗
千葉茂則
大野裕生
平松尚
近藤一輝

民藝の仲間大697号より

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