『埋没』 
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観劇記 あまご 
2018年2月12日 
 
    作・演出:中津留章仁 TRASHMASTER Vol.28  in dependent theatre

離婚した。
実家に戻った。
親は施設にいて誰もいない。
ふと
亡くなった父の 生まれた村へ行きたくなった。
そこには以前よりも細くなった
父の古い友人がいた。
この村には人がいない
そう云われている。
わずかな月給で
議員になる人もこの村ではいなくなった…。
村の大半は消えてしまった。
誰もこの村を救ってはくれない。
未来はなく、滅びゆくのみの運命なのか…。
でも私は
村の中にのみ人は存在すると信じている。
現実を生きる本当の人間の姿が。
ここにはかつて人がいた。
道があった。
村役場があった…。
それらは
今滅びゆくこの村を水の奥底から
どんな想いで見つめているのか…。
生きることに疲れたときには、私は歴史に触れにゆく。
先人たちの想いに会いにゆく。
今にも埋もれてしまいそうなわたしに
想いに
世界に抗うために。
けれどもその水面に映るのは
いつも少しくたびれた私の顔だけだった……。

パンフレットから
 中津留さんのこと知ったのは一昨年の5月
戯曲の勉強会で『そぞろの民』を読んだのが最初でした
2015年9月19日参議院で安保法制法案が強行採決された時
まさにその時に『そぞろの民』が上演されていました
プロローグはこのように始まります
暗闇の中、国会の特別委員会で、安保法制法案が
強行採決する騒乱の音声が聞こえる。
明かりが入ると、そこは東京の郊外にある
豊島家の居間と台所と廊下


ちょっと驚きでした
現代を描く旬な劇作家がいたとは・・・
そして
東演による『琉球の風』
昨年末に青年座による『断罪』
中津留作品を舞台で観るのは3作目です

『埋没』はあらすじにもあるように
かって
ダム建設によって沈んでしまった村
そこで働いていた人たちの生き様を
ダムができる前と今を
くり返しながら描いた作品です

昔も今も
お金が人々を分断させます
そして自然が破壊されてしまいます

ふと田舎の町のことを思い出しました
小さい頃
魚を捕ったり泳ぎ回っていた川が
ずいぶん汚れているな〜

思ったのはいつごろだったのか
思えば
下流に大きなダムが出来てから
数年たった頃
ダムの存在は長い間
意識のなかになかつたように思います
この芝居をみて
川の汚れとダムとの関連が結び付きました
自然とは正直なものです
私もまた
自然の破壊者のひとりだったのかもしれませんが
自然に抗うことは
大きなしっぺ返しをくうものだと
あらためて感じました

人びとの繋がりが復活するとともに
自然もまた蘇ること
しかし
それはとても難しいこと
いろいろと考えさせられる芝居でした

本公演は中津留さんが主宰するトラッシュマスターの芝居
トラッシュマスターズは初めて
私のとっては初めての役者さんばかりですが
あとで
山本宣さんが出ていたねと聞き
驚きでした
親子2代に渡る物語で
子が親になり
親が子になるという
ちょっと混乱しましたが
客演の山本宣さんも含め
なかなか見応えのあるアンサンブルでした

出演
倉貫匡弘
森田匠
森下庸之
長谷川景
川ア初夏
藤堂海

みやなおこ

山本亘




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