『小さなエイヨルフ』 
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観劇記 あまご 
2018年11月15日 
 
作:イプセン 翻訳:原千代海 演出:鵜山仁
ピッコロ劇団第62回公演



あらすじ(パンフレットから)
町から数マイル離れた、フィヨールドに臨むアルメルス家。
著述家のアルフレッド(岡田力)と妻リータ(森万紀)の間には
足の悪い9歳の息子・エイヨルフ(声:亀井妙子)がいる。
夫婦は、アルメルスの妹アスタ(今井佐知子)に
エイヨルフの家庭教師を頼んでいる。
また
アスタに思いを寄せる土木技師ボルグヘイム(吉村祐樹)も
アスタに会うために度々家に訪れていた。
ある日
アルメルス家を鼠ばあさん(橘義)という不気味な老婆が訪れる。
このときを発端として一家に大きな事件が起こり
彼らの間にひそんでいた問題が一気にあふれだす―



舞台装置にちょっと驚きました
おおきな切り株のような八百屋舞台(傾斜舞台)に
テーブルやソファーが並べられている
???
切り株のように見えたのはムンクの絵模様でした
舞台の周りの海もムンクの絵模様で写しだされていました
ムンクもノルウェーイの画家であったことを思い出しました

芝居はというと
とても難しい・・・・
公演チラシの中で演出の鵜山仁さんは
人間の心身には
光と闇
聖性と獣性
利己と利他
愛と憎しみ等
対立する要素が同居しています。
それら二項対立の両極が激しく引き裂かれ
また混じり合い
思いもかけないものに変容する
そんな葛藤のピーク
ドラマのクライマックス


書かれていました

長い年月の間には様々な葛藤や愛と憎しみがあるでしょうが
2時間のドラマに圧縮されると
ついて行けません
時に哀しみを思いだし
時に喜びを感じ
混沌としたなかでぼお〜っと時を過ごしているものにとって
突き刺されるような痛みを感じます
かなり刺激的な芝居だと思います
なにもなかったこと
突き詰めれば無の世界でありたいと願う者にとって
やはりイプセンは強烈です
そして
イプセンの芝居に出てくる女性は皆個性的です
ノラやヘッダやエリーダ

リータを演じた森万紀さん
気迫を感じました
リータの夫アルフレッド(岡田力)さん
アルフレッドの妹(今井佐知子)さんもリータの激しさを
しっかり受け止めていてよかった
鼠ばあさん(橘義)さんも十分不気味でした
エイヨルフは人形で声(亀井妙子)でしたが
人形にする発想はとても面白く思いました
土木技師のボルグヘイム(吉村祐樹)はとても誠実な感じで
私自身も土木技師ですからとても共感を覚えました(笑)
ああ
この世はなんてすばらしいんだろう---
道路建設の技師ぐらい幸せなものはいませんよ!

ちょっとうらやましい台詞でしたね
アルブーゾフの「私のかわいそうなマラート」を思い出しました



イプセンはいいですな
この芝居で音楽劇「ペールギュント」を除けば
イプセン戯曲選集(毛利三彌)を観終えたと思っていたのですが
あと2作品残っていました
「ロスメルホルム」と「私たち死んだものが目覚めたら」
なかなか見る機会はなさそうです
音楽劇「ペールギュント」はイプセンですら上演は難しいと思った作品
「ペールギュント」聞かせ解説してくれた師匠は
日本ではとても無理
歌と身体表現を合わせもつ役者は日本にはいない・・・と
これは夢としてとっておくしかありません
それともノルウェーへ
イプセンとグリークとムンクの世界に浸ってみたいです
白夜のフィヨルドが待ち受けているようです


 

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