『夏の夜の夢』 
Masao'sホーム  
観劇記 あまご 
2019年5月25日 
 
原作: W・シェイクスピア
演出: ポール・ステッビングズ
ITCL インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドン
会場 甲南大学 甲友会館



神戸にシエイクスピアが本場のロンドンから
やってきた
ITCL インターナショナル・シアター・カンパニー・ロンドン
チラシによると
 フィジカルシアターというユニークなグロトフスキー・メソッドで鍛錬した演劇人によって1980年に結成された劇団で、多くの演劇賞を受賞しています。また、劇団設立当初から芸術監督を務めるポール・ステッピングスは、長年に渡る海外での英国文学作品普及に追力した功績に対して、2013年、英国王室より勲章を受賞しました。毎年行われる世界ツアーでは、ヨーロッパ諸国を中心に公演を行っており、日本ツアーは、今年で46回目を迎えます!

会場は近くの甲南大学です
甲南大学では昨年の『ロミオとジュリエット」に続いて
2回目のITCL公演だそうです
今回の公演主催者は東京や関西の大学が中心
単独では呼べませんね
素晴らしい企画です
最近はロンドンで上演されている芝居をNLTでよく観ますが
今回は映像ではなく
本物ですから
呼びかけたら10人以上集まりました
もちろん定員380名の甲南大学甲友会館は満席でした

会場に入るといつも観る劇場と雰囲気が違います
若い学生さんの熱気が溢れています
ちょっと緊張しましたが
年配の方も結構いらして安心しました

舞台は小さな掛け軸のような装置があるだけで
なにもない空間
噂に聞くピーター・ブルグの
白い壁だけの空間で演じられた『夏の夜の夢』を思い出しました
言葉もさることながら
舞台装置にちょっと不安を感じましたが
流石

オープニングはアマゾンの女兵士たちと
アテネの兵士たちの闘い
アマゾンの女たちはバイオリンを弾きながら
弓で戦います
アマゾンの女王は敗れ殺される寸前に
その美貌に虜にされたシーシュースに求愛されます
こんな場面あったかな?
(小田島雄志訳にはありませんでした)
などと考えながら
意外な幕開けに胸が高鳴ります
字幕はありました

最初はよくわからなかったのですが
役者は六人だけ
たとえば
妖精パックがライサンダーになり
劇中劇を演じる役者に早変わりするなど
転換の見事さにびっくりしました
皆さん一人三役以上
小柄な役と大きな役とのコンビネーションも見事です
歌も上手いし動きも鮮やか
それに
舞台は森の中ですが
妖精の王が服を拡げて樹になったり
(ボトムにおしっこかけられて爆笑!)
布が森になるなど
想像力が乏しくとも充分イメージできました
トランク劇場・移動劇団です
これなら舞台装置を鞄に詰めて
身軽に世界各地を
パックのように飛び回れます


写真は学習院大学の公式HPから

甲南大学甲友会館は白壁でしたから字幕もよく見えました
先ほども書きましたが
ピーター・ブルグの白壁の舞台と重なりました

『夏の夜の夢』
2003年にモスクワのユーゴザーパドが来日した時
故ベリャコーヴィッチ演出で観ました
そして2年前
モスクワでフォメンコ工房による『夏の夜の夢』
まさに祝祭劇に相応しい
幻想的な舞台でした

シェイクスピアの作品はどのようにも描くことができる
過去でも
現代であっても
未来でも
人々の心模様を写しだす作家だと思います

シェイクスピア芝居には副筋として出てくる庶民達
ハムレットの墓堀であったり
お気に召すままの道化であったり
庶民の立場から見える魅力があります
『夏の夜の夢』には
大工や指物師・機屋・仕立て屋達がお祝いの芝居を演じます
機屋のボトムがロバに変身させられ
妖精の王女がボトムに夢中になり
もちろん魔法のせいですが
そして終幕
公爵と二組の若者達の結婚式のあと
沢山の候補作品のなかから選ばれたのは
ボトムたちの
「ピラマスとその恋人シスピーの悲劇的滑稽劇」
なんの取り柄もない芝居だと公爵の取り巻きは言いますけど
アテネで働く職人連中が生まれて初めて記憶力を使って台詞を覚え
公爵のために四苦八苦して練習した
その気持だけが殊勝だと
公爵は言います
是非観たいとも
庶民の気持が分かるのですね
シエイクスピアが言わせたかったのかもしれません
ロミオとジュリエットの最後の場面にかなり似た
荒唐無稽な劇中劇ですが
役者達は真剣
特に壁の穴を演ずる役者には大笑い
公爵の庶民に対する暖かい眼差しは
庶民が求めていたものだと思いました

パックの終幕の台詞はいいですね
われら役者は影法師
皆様方のお目がもし
お気に召さずばただ夢を
見たとおもってお許しを

・・・・
小田島雄志訳

来年は『オセロ』だそうです
楽しみにしています



ページTOP

Masao'sホーム 観劇記