『寿曽我対面』 
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観劇記 あまご 
2019年5月22日 
 


東京観劇旅行二日目は歌舞伎座
『寿曽我対面』
幕見席です

歌舞伎は解説がないと分かりづらいですね
手元にある「歌舞伎歳時記」(俵良裕)によると
江戸では初春に必ず曽我狂言が上演されたそうです
曽我狂言とは
幼い頃に父を工藤祐経に討たれた
曽我十郎・五郎が辛苦の末に父の仇を討つという物語です
初春から仇討の場面を出せないので
後日の再会を誓う場面で終わります
従って
ストーリーより様式性や音楽性を楽しむ芝居なのだそうです
新春の祝祭劇
明治十八年に河竹黙阿弥がこれまでの脚本を整理して
一幕物にしたのが
『寿曽我対面』

舞台は工藤祐経が鎌倉幕府の執権(今なら総理大臣)に就任の祝宴の場
江戸幕府を批判できないので
歌舞伎の幕府はいつも鎌倉幕府に置き換えられています
工藤が登場して着座すると
小林朝比奈が曽我兄弟との引き合わせを願い出ます
曽我兄弟が登場すると
工藤は
二人が河津三郎に似ていると言います
河津三郎とは兄弟の父で
領地を巡る争いで工藤に弓で殺され
三郎の妻は二人の幼子を連れて曽我氏に再婚したのです
兄弟が名乗りをあげると
工藤が「めずらしきたいめんじゃな」と感嘆し合います
五郎は工藤に襲いかかろうとしますが
兄の十郎に止められます
曽我家は家宝の刀「友切丸」を紛失しているので
公式の仇討が認められないのです
そこに友切丸を手に入れた曽我の忠臣
鬼王新左衛門が駆けつけ兄弟の仇討は許されます
工藤は二人に富士の狩場の通行手形を与えます
工藤は公式行事を終え
私の身に戻った後で兄弟に討たれるつもりなのでした
なんと潔いことか
見事な終幕でした

曽我兄弟は歌舞伎にたびたび登場します
「助六」も曽我五朗の世を忍ぶ仮の姿ですね
時の権力の奢りを皮肉る江戸歌舞伎
庶民は幕見席でも十分楽しめます



 

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