『NLT アントニークレオパトラ』 Antony & Cleopatra
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観劇記 あまご 
2019年8月12日 
神戸新開地 KAVC 

クレオパトラ(ソフィー・オコネド)
アイラス(ジョジア・ランダーズ)     チャーミアン(グロリア・オピアニヨ)
アントニー(レイフ・ファインズ)

芝居も戯曲も読んことあるのに
記憶は・・・
初めて観た舞台は
1979年6月俳優座公演
クレオパトラは栗原小巻さん
豪華な舞台でした

今回の舞台はナショナル・シアター オリヴィエ劇場(ロンドン)
演出:サイモン・ゴッドウィン
ジュリアス・シーザーに続く時代の10年間
紀元前40年から30年までの出来事を圧縮し
時を現代に置き換え
5幕42場面が回り舞台で展開します
休憩を含めて3時間40分
見事な構成でした

ジュリアス・シーザーがブルータス達に殺されたあとのローマは
マーク・アントニーと
ジュリアス・シーザの甥であるオクテビアス・シーザー
レピダスの三人執政官による政治体制がしかれていました


アントニー& シーザー(タンジ・カシム)&レピダス(ニコラス・ブレヴォスト)
アントニーは『ジュリアス・シーザー』の芝居では
老獪な策士でしたが
この芝居では清廉潔白な武将
ただ
クレオパトラの魅力に取りつかれた
大酒飲みのだらしないところがあり
シーザーとの闘いで戦闘が有利であるにも拘わらず
怖気づいたクレオパトラが逃げ出すと
跡を追うかけて戦闘を放棄するといった
無責任ぶり
雌の尻を追う雄鴨のように
まさにたけなわという戦をすて
女のあとにくっついて逃げた


スケアラスがイノバーバスに語ります
呆れた部下たちは次々とシーザーに投降して行きます


イノバーバス(テイム・マクマラン)&エーロス(フサヨ・アキナデ)
ただ
投降したイノバーバスはアントニーを裏切った自分を呪い苦しみます
当初は道化のような役割を演じていたイノバーバス
アントニーはイノーバーバスが残して行った荷物を送り届けます
アントニーの優しさにイノバーバスはある決意をします

そして
闘いに敗れ
クレオパトラが亡くなったとの知らせを聞いたアントニーは
解放奴隷のエーロスに自分を殺してくれと頼みますが
アントニーを慕うエーロスは自害してしまいます
クレオパトラの死は
実はアントニーの愛を取り戻すための狂言だったのです
アントニーはエーロスの剣で切腹するのですが
死にきれません
クレオパトラの居る霊廟に運ばれ
クレオパトラに抱かれて息を引き取ります

『ジュリアス・シーザー』に出てくるアントニーとは一味違った
人間的な優しさと弱さを持っています
シェークスピアは歴史上の人物をシェイクスピアの眼から
見事に描ききっています
これがシエイクスピア芝居の魅力かもしれません

終幕はクレオパトラの自害の場面です
ローマの初代皇帝となったオクテービィアス・シーザーが霊廟に現われ
クレオパトラを許すと言います
しかし
シーザーの言葉が口先だけだと見抜いたクレオパトラは
毒蛇に噛まれて自害します
付き人二人も亡くなります
このシーンは絵にもなった有名な場面ですが
絵にあるような小さな黒蛇ではなく
少し大きなカラフルな蛇でした
恐いですね

芝居全体としての感想
このところ観たNTLのシェイクスピア劇
ハムレットもジュリアス・シーザーもマクベスも現代版でしたが
今回は時代版で見たかった
そんな思いが少しありました
しかし
2000年前の人びとの想いも
基本的には皆同じ
名声と欲望のあとの転落
喜びと空しさ
時代がどのように進歩しようが
人の心は変わらない
ただ
戦だけは愚かなことだと
知って欲しいけど・・・
いつの世も繰り返されている

空しさのなかにある
シェイクスピアの言葉を噛みしめてみたら
たとえ
民の声が届かなくとも
周りに道化のような人物がいたら
その言葉が理解出来たら
光が見えるかもしれない
民もまた
道化の言葉が聞こえたら
光に向かって進めるかもしれない
そんな想いがしました
舞台の雰囲気はyoutubeでどうぞ

https://youtu.be/iBS9Za3_Iok



次回は『アレルヤ!』
すでに観てきた友人はとてもよかった!と
楽しみにしています
 

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