『人間合格』 
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観劇記 あまご 
2020年8月8日 
西宮芸文 
作:井上ひさし 演出:鵜山仁
出演:青柳翔 塚原大助 伊達暁 益城孝次郎 北川理恵 栗田桃子



太宰治といえば恋多き男
度重なる心中事件
この芝居もそんな流れかな

思いきや
太宰と学友たち3人の友情の物語でした
昭和5年(1930)修治(青柳翔)の上京
学生下宿・常盤館での出会いから始まり
フロシキ劇場の結成
たわし売りなどのプロパガンダと資金活動
戦争
別れ・再会
終戦

歴史の流れに
流される人・抗う人
3人の運命もまたそのように映し出されていました

この芝居で強い印象を受けたのは
佐藤浩蔵(塚原大助)でした
彼は逃亡生活を送りながら非合法活動を続けます
太宰の本を抱えて
福岡の池炭鉱
鳥取の崎港の漁師見習い
新潟の倉温泉の下足版
群馬の城村でこんにゃくつくり
そして
湖のボート屋
羽で人夫
この辺りは井上流のダジャレですが
佐藤が送るはがきの差出名も
赤井・赤川・赤岩・赤沢・・・
佐藤の生まれは山形だそうですから
井上ひさしさんの思い入れもあるのかもしれません
佐藤の逃亡は
仙台青木旅館で終わります
昭和19年12月下旬
約13年間の逃亡生活です
津軽家の番頭である中北定一(益城考次郎)がユダの任を引き受け
青森警察に
そして終戦
時代は大きく変わりました
最後の場面は
インターナショナルをうたいながら去ってゆく若い労働者たち
屋台で眠っているかのように見えたのは修治
佐藤と山田定一(伊達暁)が亡くなってしまったことを悔やむ修治
時代も人も
何もかも変わってしまいいました
エピローグは美しかった

この芝居
二人の女優さんが素晴らしかった
北川理恵さんは7役
栗田桃子さんは8役
桃子さんは仙台青木旅館の戦未亡人ふみ
佐藤はふみを愛していた
戦後中北の計らいで二人は結ばれます
佐藤にもひと時の幸せがあったことがうれしく思いました

『人間合格』
太宰治ってだれ?
津軽が運んできた日本の、
青春の風だべよ

まさに三人の友情が
青春の風
なのかな・・・
私にも遠い昔の風が吹き抜けたように感じた
そんな芝居でした




 

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