『もういちど、鴨を撃ちに』 
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観劇記 あまご 
2021年4月11日 
 
作:A.ヴァムピーロフ「鴨猟」(宮澤俊一・五月女道子訳 群像社)
演出:島守辰明(兵庫県立ピッコロ劇団)

ある、ちっぽけな男の喜劇。
仕事も結婚生活も順調にいっていたズィーロフ。
新しい家を持つことにもなり
何の不足もなかった彼は
ある時になってそのすべてに意味を見失ってしまう。
唯一、鴨猟へ行くことを願っていたある雨の朝
彼の部屋に現れた少年。
少年の持ってきた葬式の花輪には
「ヴィクトル・アレクサンドロヴィチ・ズィーロフ」と彼の名前が書かれていた…。
チェーホフの再来と嘱望されながら34歳で夭逝した
旧ソビエトの鬼才アレクサンドル・ヴァムピーロフの名作。

ズィーロフ:堀江勇気
クザコーフ:浜崎大介
サヤ―ピン:今仲ひろし
クシャーク:風太郎
ガリーナ:吉江麻樹
イリーナ:車 貴玲
ヴェーラ:有川理沙
ワレーリヤ:木之下由香
ジーマ(レストランのボーイ):三坂賢二郎
少年:金田萌果

A.ヴァムピーロフの作品は2013年11月に俳優座プロデュースによる
『もし、終電車に乗り遅れたら・・・』(原題:長男)を観ました
この芝居はとても暖かい感じの芝居でしたが
今回の舞台は
ちょっと不気味さを感じる芝居でしたね
なにせ
お葬式の花束が届き
受け取った本人は生きているのか死んでいるのか
よくわからない感じでしたから
暖かさと不気味さが
チェーホフの再来と呼ばれる所以なんでしょうか
ヴァムピーロフ・アレクサンドル(1937-72) はイルクーツクの生まれ
かつて大好きだったロシアの作家アルクセイ・アルブーゾフの
『イルクーツク物語』を思い出します
ヴァムピーロフは34歳で亡くなったそうですが
亡くなった1972年は私の青春時代
当時のソ連という国にも憧れがありました
しかし
現実のそれは一方で矛盾に溢れた国だったようです
芝居の中に出てくるように
アパートは配給され
それなりに社会主義らしく見えますが
官僚的で
人々はあまり楽しく働いていないように見えます
いまの日本が新自由主義のもとで
酷使されているのと逆で
どちらもどっちともいえます
この芝居が訴えているもの
それは何か?
もういちど、考えてみる
そんな想いです
この芝居の原作である鴨猟を読んでみたくなりました


現代のロシア文学・第2期4巻
 

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