『定本熱海殺人事件』 |
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Masao'sホーム 観劇記 あまご 2021年10月9日 |
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原作:つかこうへい 演出:春田純一 神戸三宮シアター・エートー 【あらすじ】 チラシから 集団就職で上京してきた大山金太郎(中川香果)は 幼馴染のアイ子を熱海の海岸で殺害してしまう。 熱海で起きた平凡な事件を 東京警視庁捜査一課の木村伝兵衛部長刑事(春田純一)は 型破りな捜査法で自分が望む一流の事件へと導こうとする。 そこに富山県警から花の東京警視庁に意気揚々と赴任してくる熊田留吉(貴山侑哉)。 伝兵衛とその部下片桐ハナ子(大下順子)と共に 熊田の想像をはるかに超えた捜査法が目の前で繰り広げられる。 伝兵衛の捜査法に翻弄されながらもいつしか その中に参画して行く熊田であった。 |
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先月9月19日ピッコロシアターで上演された文学座の「熱海殺人事件」に続いて 先日10月9日春田純一俳優生活50周年記念の 「定本熱海殺人事件」を三宮のシアター・エートーで観てきました。 どちらも見ごたえのある芝居で、とても人気のある作品だということがうなずけます。 この作品は1973年につかこうへいさんが文学座に書き下ろし 同年11月26日に文学座アトリエで初演された作品です。 「定本熱海殺人事件」はつかこうへいさんが文学座の上演後書き直されたものだと思います。 ストーリーはほぼ同じですがセリフや舞台の流れはかなり変わっていました。 今回の舞台の方が分かりやすいですね。 どちらの舞台にも『きょう、ママンが死んだ』カミューの「異邦人」の冒頭のシーンが出てきます。 うっかり聞き逃してしまうところですが 文学座の舞台では伝兵衛が電話をかけるシーンで終わりますので こちらの方がつながるように思います。 手元にある「熱海殺人事件」1975年1月25日発行新潮社版より最後の場面のセリフを抜粋します。 |
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『ムルソーの一発の銃声が硝煙によってでしか、あまりにも眩しすぎる太陽と訣別出来得ない現代人の苦悩を指し示しているものであるとすれば、それを嘲笑するかのごとく、今回の熱海殺人事件は、死ぬべくしてその役割を全うすべき山口アイコはどこにも在らず、大山金太郎を犯人と仕組むいかなる構造をも、日常に還元することを許さないのであります。』 |
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伝兵衛のこの独白部分は早い段階でカットされたそうです。 多分、分かりにくかったのではないかと思います。 私はこのセリフは好きですし カミューの「異邦人」に出てくるムルソーの殺人の動機 「あまりにも眩しすぎる太陽」と大山金太郎の「海が見たかった」と重なります。 手元にある本です 今回の舞台となった「定本熱海殺人事件」は「つかこうへい演劇館」で読むことができます。 いろんなバージョンがありますね。 定本熱海殺人事件では 部長の台詞 良かったですね 「踏ん張ろうと思えば、踏ん張ろうと思えば殺さんでもよかったんだよ。 きさまが殺した女の家族は 今どんな気持ちでいると思ってるんだ」 そして このあと 大山 「・・・・海が見たい」 と続きます シアター・エートーは三宮にある小さな劇場です まじかで役者さんたちの息吹に触れることができ 緊張感溢れる舞台を経験することができました。 次回も楽しみにしています |
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