『歳月/動員挿話』 
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観劇記 あまご 
2021年3月18日 
文学座アトリエ 
作:岸田國士 演出:歳月・西本由香/動員挿話・所湊



 文学座の創始者の一人岸田國士の作品を見る機会は少なく
初めて見たのは2011年11月7日
紀伊国屋サザンシアターで岸田國士傑作短編集
「明日は天気」「驟雨」「秘密の代償」でした
そして
2016年12月9日にはアトリエで久保田万太郎の「かどで/舵」を観て
感動!
なるほど
文学座の創始者たちは時代の流れをしっかり見つめ
戦前・戦中・戦後の
演劇の灯を支えていたことを知りました
庶民を見つめる温かい優しさが感じられます
それは芝居が観客(庶民)があってこそ成り立つものだからということを
ご存じだからと思います
自分たちが誰に支えられているのかに気づかず
自分たちが救っているのだと
そう思う人たちに仕切られているような気分になる
今日この頃です
テレビを見ていると虚しい議論に疲れます
芝居では
観客が舞台で繰り広げられる出来事をじっと見ています
何のために誰のためにと想像しながら
世間の空気の流れとは違った世界を感じ取ることができるのです

1作目は 「歳月」



物語は大正8年頃の初春
隠退した高級官吏浜野計蔵(中村彰男)の応接間から始まります
浜名家の末娘八州子(前東美菜子)が若い学生との間に
子供を身ごもったことで一家は騒動に
相手が結婚を拒んでいることから
彼女は自殺未遂にまで追い込まれます
妹のために兄・計一(神野崇)と弟・紳二(越塚学)は
八洲子の友人・礼子(吉野実紗)も巻き込んで
厳格な父の耳に入る前に自分たちで最善策を探ろうとするのですが・・・

そして7年後 昭和の初頭の夏


八州子にはみどりという娘が生まれ
計蔵は優しいお爺さんとなり
長男計一も独身で同居
次男紳二は大学を卒業し技師として働ています
そこに突然名刺を持った男が現れ紳二と激論
姿は現さないが立身出世の亡霊と
計一が呼ぶあの男
八州子は涙ながらに
今でもあの人を愛しているといいます

3幕は2幕からさらに10年後

計蔵は7年前に亡くなり
計一 50歳
紳二 45歳
八州子と礼子は40歳
みどりは17歳の娘に成長しています
紳二と礼子は結婚して
計一は独身のまま
そこに
名刺を持った男が現れます
・・・・
ラストはみどりがピアノに向かい
グリークの「春」を演奏
暗転

二作目は「動員挿話」

時は日清戦争の頃明治37年の夏
宇治少佐の居間



陸軍少佐宇治(斉藤祐一)の師団に出征の令が下った
宇治少佐は馬丁の友吉を連れてゆきたいという
しかし友吉の妻・数代は
友吉がいなければ生きている甲斐がないという



最後はなんというか
驚きました
岸田國士という作家に

所湊さんの演出は一風変わっていて
役者さんの動きがとてもコミカルです
自然なようで不自然な動きと表情
これが不思議と
リアリテーを感じさせます
昨年の「いずれおとらぬトトントトン」も
同じようにコミカルで不思議な動きある芝居
注目する若手演出家です
宇治少佐を演じた斉藤祐一さんは「いずれ劣らぬトトントトン」にも出演
今回もまた好演でした
そして
宇治少佐婦人役の鈴木亜希子さん
数代を演じた伊藤安那さん
なんと魅力的な女優さん
きりりとした口調としぐさに感心しました

文学座のアトリエ芝居が関西でも観れたらと
つくづく思います

 

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