『誰もいない国 No Man’s Land』 
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観劇記 あまご 
2018年8月24日 
 
作:ハロルド・ピンター 演出:ショーン・マサイアス
ウインダムズ劇場(ロンドン)
上演時間 150分(休憩含む)
神戸アートビレッジセンター(KAVC)で見て来ました
Natinal Theatre Liveの舞台映像は6本目
すっかりNTLの虜になってしまいました
ハロルドピンターの芝居はなかなか観る機会がありません
「温室」「管理人」に続いて3作目です
いずれも難解というより
不思議な芝居ですが陶酔感があります
芝居に関する陶酔感
今読み始めている渡辺一民著「岸田國士論」の中で
「演劇の本質的な美」について書かれています
少し長くなりますが引用します

舞台の上を流れる生命---
それが仮令いくつかの生命からなりたっているものであっても---
その生命を一つの生命として感じる時に
演劇の本質的な「美」が生まれるということに
注意しなければなりません
これは俳優にとっても見物にとっても必要なことである
作者の才能、作品の価値、俳優の技量が
ある一点で渾然と溶け合っている
そこには
ただ人生の真理を語る生きた魂の
諧調(ハーモニー)に満ちた声と姿とがあるばかりであります
それは人間のあらゆる感情の旋律であり
あらゆる心理的表示の交響楽であります
此の舞台の幻象は見物のイルュージョン乃至想像と相俟って
一つの陶酔境を実現する

(演劇の本質)
そして「人生の観方は一つではない」と語っています

この芝居の二人の会話
どこまでが真実なのか
それとも嘘なのか
頭のなかに混沌とした疑問符を飛ばしながら
二人の名優の絶妙な会話を楽しんでいる私がいました



スプーナ(イアン・マッケラン)とハースト(パトリック・スチュアート)



フォスター(ダミアン・モロニー) とブリグス(オーウェン・ティール)

ストリーの一部をパンフレットから

ある夏の夜。「ハースト」という年配の男が
パブで出会った同年代の男を連れて豪華な邸宅に戻ってくる
そして二人は居間で酒を飲み始める
客人の男は自分がいかに知性と鑑識眼を備えた人間かを
長々と語ったあと
「私は詩人で、名はスプーナーと申します」と明かす
酒と会話が進んでいくと
突然スプーナーがハーストの男らしさや妻との関係について
なじり始める
すると、それまで聞き役に回っていたハーストが
急に椅子から立ち上がり
もっていたグラスを床に投げつける
「誰もいない国 動かない 変わらない 老いいることもない
いつまでも永遠に 冷たく 静か」
という言葉を呟いたハーストは2度転んだ末
四つん這いの状態で居間から出て行く
・・・・・
・・

YouTubeがありました(約1分)
https://www.youtube.com/watch?v=i9RA6B9FOKM
 

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