『グレイクリスマス』 
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観劇記 あまご 
2018年12月19日 
 
作:齋藤憐
演出:丹野郁弓
劇団民藝 日本橋三越劇場



あらすじ(パンフレットより)
敗戦の年のクリスマス。進駐軍の将校クラブに母屋を接収され、離れに追いやられた五條伯爵家。天皇は人間になり、華族制度は廃止。路頭に迷って自殺を図る生活力のない当主の五條(千葉茂則)、戦犯裁判にかけられる弟(本廣真吾)、ヒロポン中毒の息子(岩谷優志)らの中で女たちはたくましく、後妻の華子(中地美佐子)と弟の妻・慶子(吉田陽子)は、将校クラブのホステスを引きうけた。不穏な動きを見せる闇屋の権堂(岡本健一・客演)や、日系二世の軍人ジョージ・イトウ(塩田泰久)が出入りする離れではにぎやかな宴が始まっている。
ジョージの説くデモクラシーの理想に胸をときめかし、愛をふくらませてゆく華子。娘・雅子(神保有輝美)は、なぜか権堂に魅かれてゆく。やがてアメリカの占領政策がかわり、朝鮮戦争がはじまる。特需景気で旧勢力が息をふきかえし、五條の弟は政界に復帰、息子は警察予備隊に。そして翌年、戦死したジョージから、思い出のオルゴールが華子のもとに届くのだった……。

 
五条家の離れ
写真はステージナタリーより

斉藤憐作「グレイクリスマス」
なんどか見たことがあるけど

こんな時代に再演されると
改めてこの戯曲の持つ意味に驚かされます

この芝居は
民衆と支配者
デモクラシーと権力
アメリカの持つ二つの側面の鬩ぎあいの物語
なのかもしれません
そして同時に
私という概念のなかった戦前の日本人のこと
今も通じるものがあるようです


華子とジョージ・イトウ

駐留軍の中に二つの勢力があり
民政局は日本にデモクラシーを根付かせ
二度と戦争が起こらないように新しい憲法を提案する
一方
情報局は日本を反共の砦として
基地を作り日本をアメリカの支配下に置く
戦後数年は二つの勢力が鬩ぎあい
やがて
情報局側が有利となり
朝鮮戦争が始まります
ジョージ・イトウは民政局に属する日系の将校
華子はジョージの説くデモクラシーの夢に
胸がときめき恋し愛し
クリスマスプレゼントとして
オルゴールを渡します



今回の上演では岡本健一が客演で参加
ちょっとした悪役の権堂を演じます
芝居の案内役も務め
今回の芝居が
「男性版グレイクリスマス」というのも
頷けます
民藝&岡本健一
芝居の幅が広がりました


華子と雅子

雅子の恋人は多分B級戦犯で処刑される
いつしか雅子は権堂に惹かれ始めるが・・・・
雅子との別れの時
権堂の歌ったハングルの蛍の光がとてもよかった
(直訳)
永い間親しかった友よ
別れとはどうしたことか
どうしても別れねばならないのか
どこえ行こうとも忘れよう(か)熱いい友情を
またあう日まで歌おう

さよならさよなら
握手して別れる辛さのため
涙が流れる
このまま心を暖め
またあう日まで歌いましょう


華子と五条伯爵

ジョージは朝鮮戦争で戦死し
形見のオルゴールが届けられる
権堂は警察に追われ雅子と一緒に逃げようとするが
雅子は応じない
華子は雅子にお金を渡し
権堂と一緒に行くように勧めるが・・・
遠い銃声
・・・
オルゴールを回す

華子は憲法を暗唱する
この憲法が国民に保障する自由及び権利は
国民の不断の努力によって
これを保持しなければならない

すべての国民は
法の下に平等であって
人種、信条、性別、社会的身分により差別されない

日本国民は・・・国権の発動たる戦争と
武力による威嚇又は武力の行使は
国際紛争を解決する手段としては
永久に放棄する

この憲法が
日本国民に保障する基本的人権は
人類の多年にわたる自由獲得の成果であって
・・・
現在及び将来の国民に対し
侵すことのできない永久の権利として
信託されたものである。


雪は降り続いている
ー幕ー

・・・・

芝居が終わった後
様々な想いが過りました
今年見た芝居
「わが街マンザナ」に重なります
移民のことです
日系移民の男性は軍隊で最前線に志願し
女性はマンザナのような強制収容所に入れらました
しかしイタリヤやドイツの移民はそうではありませんでした
フランスも日独伊仏同盟の国でしたね
マンザナではアメリカに移住する東からの民族と
西から移植する民族を差別していました
南からの民族も排除しています
アメリカも日本も中国も
元は多民族国家
流民の国


ジョージは華子に語ります
ジョージ アメリカで日系人は、大学を出ても一流企業には入れません。銀行は日系人にはお金を貸してくれません。・・・日本に連れてこられた朝鮮人のように
華子 朝鮮人がどうしたの
ジョージ  そう。あなた方が、朝鮮人がこの日本でどういう目にあっているか知らないように、アメリカの善良な人々は日系人がどのような目にあっているかも知らない
華子 アメリカはデモクラシーの国じゃなかったの
ジョージ 訂正します。デモクラッシーとは植民地をもつ白人社会の中で生まれた思想で白人だけの自由と平等を守ろうとする考えです
・・・・・
ジョージ 私は先程前線に行くことを志願しました
華子 どうして!
ジョージ それは、この5年間、この国で私がアメリカ人だったからです
華子 でも、日系人は、アメリカ人として扱ってもらわなかつたんでしょう
ジョージ そうです。だから日系人は、いつもアメリカ人になろうと努力しているアメリカ人です
・・・・・
華子 そうよ。あなた、日本人に戻ればいい。日本は永久に戦争しないんですもの。そうよ。そうすればいいのよ
ジョージ いいえ、それはできません
華子 どうして
ジョージ 私たちは日本に棄てられた日本人だから・・・もし、私の父がアメリカに渡らなければ私の一家は日本で一家心中してしていたでしょう。私たちはアメリカという国で生き延びてきたのです
五條紀明(伯爵)
  華子(その妻)
  紀孝(その弟)
  紘一(その息子)
  雅子(その娘)
  慶子(紀孝の妻)
三橋(華子の兄)
ジョージ・イトウ(進駐軍将校)
ウォルター(進駐軍兵士)
権堂
平井
藤島
ヨシ(女中頭)
ユキ(女中)
タカ(女中)
稲置(下僕)
深田(門番)
下山(運転手)
千葉茂則
中地美佐子
本廣真吾
岩谷優志
神保有輝美
吉田陽子
みやざこ夏穂
塩田泰久
神 敏将
岡本健一(客演)
吉岡扶敏
大中耀洋
船坂博子
飯野 遠
野田香保里
境 賢一
岡山 甫
平野 尚

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