『少しはみ出て殴られた

観劇記 あまご 

          作・演出: 土田英生
          MONO第39回公演 大阪ABCホール
         


 3月11日、MONOの「少しはみ出て殴られた」を観て来ました。震災から1年経ったのに、世の中の雰囲気はあまり変わっていない、むしろ、閉塞感が強まって窮屈になってきたような気もします。僕たちが経験した阪神大震災は、仲間の助け合いがあって、厳しい状況の中でも希望がありました。それは皆が対等であるということ、お互い様ということだったんでしょう。そんな今の世の閉塞感を表したような不思議な芝居でした。
舞台は、架空の国、マナヒラとヒガシマナヒラの境界線上にある収容施設、比較的軽い犯罪者達6名と2人の刑務官が仲良く?暮らしています(芝居ですから)。収容施設での生活は刺激がないから単調なんでしょう。構内作業が終わると、筋トレする者、空想的オセロゲームをジャッジマン(金替康博)を介し遊ぶ者(なかなか高級な遊びです)、眠ってばかりの刑務官(土田英生)等々、軽快なテンポでこの施設が何たるか、どんな登場人物なのかが紹介されてゆきます。8人の役者さん達のノリが良くて、爆笑、爆笑。MONO独特の、皆で「おぉ-!」が決まり、舞台は盛り上がって行きます。
が、マナヒラとヒガシマナヒラが2つの国家に分裂、国境線上にある収容施設はどうなるのか・・・・

  観る前は、収容所を舞台にした芝居ですから、暗いかな?と思っていたのですけど、意外と明るいテンポで進行、でも、やっぱり最後は、そういうことになるのですね。投じられた1本の線は誰のため何のためにあるのか、遊び心がやがて狂気となり破滅に向かって行きます。無邪気で善意なる行為と思っていても、相手の心の中に線や塊が一度できてしまうと、溶けてゆくのは容易ではありません。
MONOの芝居はいつもそうなのですが、芝居を観終わったあと、不思議な充実感があります。よく解らないまま、また次の芝居を期待してしまいます。土田さんは若くていいセンスの劇作家ですし、客層もとても若いですね。いい芝居でした。


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