『現代能楽集Z「花子について」』
能「葵上」・狂言「花子」・三島由紀夫作「近代能楽集『斑女』」より    
観劇記 あまご 

                                     作・演出:倉持裕         
                                     企画・監修:野村萬斎 
                                     世田谷パブリックシアター
                                2014年2月15日(土)シアタートラム
         
  「古典芸能と現代演劇の融合」をテーマに世田谷パブリックシアターの芸術監督:野村萬斎が取り組んでいるシリーズ第7弾「現代能楽集」。能も狂言も私にとってはほぼ初めて、能は昔京都のお寺で薪能を一度観たことがあるだけ、狂言も一度だけ、近代能とは?坂手洋二さんが「現代能楽集」を以前上演され、一度見てみたいものだと思っていたところでした。
 初めての世界、能「葵上」は紫式部の源氏物語に登場する光源氏の正妻である葵の上から受けた屈辱を晴らすために光源氏の愛人六条御息所が生霊となり病床の葵の上にとり付くという世阿弥の『源氏物語』葵の巻を現代ダンスによって表現した、まさに古典と現代の融合でした。女が鬼に変身する過程が大きな布のなかに風を吹き込み荒れ狂う嵐の海として舞台空間が表現され、「現代ダンス=踊り」という表現方法にも驚きを感じました。

                   
狂言「花子」は旅の宿で花子という遊女と馴染になり、花子から会いたいと手紙を受け取った男が妻の目をごまかすために一晩坐禅をするから近づくなと妻に命じ、太郎冠者を身代わりに押し付けて逢瀬に向かったものの、妻にばれ、太郎冠者と入れ替わった妻を相手にご気楽なのろけ話、妻は怒り心頭という物語を町工場の社長(小林高鹿)と奥さま(片桐はいり)に置き換えた現代劇のパロディでした。一晩坐禅は徹夜の溶接作業に現代風に置き換えられ、まるで本物のような、もしかしたら本物かもしれない溶接作業、飛び散る溶接の火花は怒りそのもの、片桐はいりさんの力演でした。
                    
 
 最後の『斑女(はんじょ)』は三島由紀夫の近代能楽集に収録された戯曲が基になっているそうです。花子(西田尚美)は愛した男(近藤公園)と扇を交換し、ひたすら待ち続けるうちに狂気に陥ってしまう。彼女と暮らしている年上の実子(片桐はいり)は花子の美しさに惹かれ、やって来た男を実子から引き離そうと、女の狂気と嫉妬、能の世界では男と女は最後は結ばれるという幸せな物語ですが、そうはならない、ちょっと不思議な三島由紀夫の世界でした。
                   
  
 
[葵上]           


女(ダンサー)

[花子]           


風見

[班女]           
実子
花子
吉雄

近藤公園
西田尚美
黒田育世・宮河愛一郎


小林高鹿
片桐はいり
近藤公園


片桐はいり
西田尚美
近藤公園



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