『炎 アンサンディ 』 |
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観劇記 あまご 2014年10月18日 兵庫県立芸術文化センター |
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作 :アジディ・ムワワド 演出:上村聡史 |
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中東のレバノン内戦をめぐる芝居です。 中東問題は爆撃やテロなど とても悩ましい問題ですが その宗教的背景や政治的背景がよく理解出来なくて その残虐性が恐ろしくて 芝居としては敬遠したくなります。 一昨年の「負傷者16人」や今年の「ビッグフェラー」も 自爆やテロを扱った作品で 周りの人たちは『良かった!』 と いうのですが 私にはいまいちの感がありました。 ところが この芝居「炎 アンサンディ」はとても感動的な芝居でした 残酷な物語ですけど 戦争の悲惨さや愚かさを伝えるだけでなく 宿命的な罪を背負いながらも残されたもの達が生きてゆかねばならぬ 立ち向かって行かねばならぬ姉弟に対して 不思議な感動の涙が溢れるのでした。 あらすじは 書かないほうがいいかなとは思いますが 再演されることを期待して パンフレットから転載します。 |
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中東系カナダ人女性ナワル(麻美れい)は、ずっと世間に背を向けるようにして生き、実の子である双子の姉弟ジャンヌ(栗田桃子)とシモン(小柳友)にも心を閉ざしていた。そんな普通の母親と違うナワルは、謎めいた二通の手紙を公証人(中島しゅう)に託し、ある日突然この世を去った。その二通の手紙にはそれぞれ宛名が書かれ、姉にはあなたの父を、弟には彼らには存在すら知らされていなかった兄を探し出して、その手紙を渡せという母の遺言が告げられた。その言葉に導かれ、始めて母の母国の地を踏んだ姉弟は、母の数奇な人生と家族の宿命に対峙することになる。現在と過去を行き来しながら、母ナワルの衝撃的な人生が徐々に暴かれだす。そして最後に姉弟が出会った父と兄の姿とは! |
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舞台は ‘現代のカナダのモントリオール’と 母ナワル晩年の‘過去のモントリオール’ 双子の姉弟が訪ねる‘現代の中東レバノン’と 母ナワルが生きていた少女時代からの青年期の‘過去の中東レバノン’という 四つの時間軸が交差していく。 加えて 幾つかの出来事が舞台で同時に進行する 「時・場・空」の三次元ともいえる舞台 更に見る側の想像力がなければ成り立たない 「時・場・空・席」の四次元的ともいえる 視覚的な世界が繰り広げられて行くのでした。 |
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舞台に出てくる戦争の背景はやはりよくわかりません。 戦争の発端は 歴史的にもキリスト教徒の多いレバノンで イスラム教徒が多数流入し その人口比が逆転し イスラム教徒側が国政参政権の拡大を訴えたことが 1975年のレバノン内戦の始まりだそうです。 同じ民族であると思うのですが キリスト教の中でも内部対立があり イスラム教の中にも最近よく見聞きするスンニ派や シーア派との対立や同時に派内の対立もあって 子供をさらったり 殺したり どうも砂漠の宗教というものは理解できません。 しかし 親が子供を思う気持ちは皆同じ このことをどう認識するかによって争いは防げるのかも 内戦でレバノンから家族と共にフランスへ亡命し カナダに移住した作者ワジデイ・ムワワドの願いは ここにあったのかもしれません。 |
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この芝居 21の役を7人の役者が演じるという 役者さんにとっては大変な芝居です。 ナワルを演じた麻美れいさんはナワル役だけですが 15歳の子供時代から65歳で亡くなるまでのナワルを演じるという これも大変な役です。 目まぐるしく時と場所が入り乱れるこの芝居の中にあって 圧倒的な存在感を持って 一貫してナワルを演じたことが見る側の混乱を防げたように思います。 文学座の中村彰男さんは7役 入れ替わり立ち代わり大変でした。 謎の人物 写真家で狙撃兵のニハッドを演じた岡本健一さんも6役 ニヒルな役に存在感がありました。 ナワルの弟子というか友人サウダを演じた那須佐代子さんと 公証人を演じた中嶋しゅうさんは 今年7月「ボビー・フイッシャーはパサデナに住んでいる」 の舞台を見ていましたから ちょっと近親感もあり 改めて いい役者さんだな〜と思いました。 ナワルの双子の息子を演じた小柳友さんは初めてですが 青年らしいひたむきさを強く感じました。 文学座の栗田桃子さん「くにこ」以来です。 来年は神戸で「父と暮らせば」でお会いできそうです。 今回の双子の娘役で数学者を目指す学生さん 「1+1は2ではなく1となる場合もあるという」 数学の解析は素晴らしかった! 私にはとても覚えられません。 そして 母の手紙の真実を知り 深い悲しみの中からじっと耐えている姿に深い感動を覚えました。 |
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「炎 アンサンディ」素晴らしい舞台でした。 スタンデイングオベーション 涙が止まりません。 演出は文学座の上村聡史 「ボビー・フイッシャーはパサデナに住んでいる」を演出した 期待の若手演出家です。 公演終了後 上村聡史・麻美れい・中島しゅう・岡本健一によるアフタートークショーがあり 戦争の悲惨さについてそれぞれの想いを語られたことが印象的でした。 是非再演を期待したい芝居です。 |
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写真はパンフレットから |
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