『十字軍』

観劇記 未央 

文学座4月アトリエの会
2013.4.20
          作 :ミシェル・アザマ   
          訳 :佐藤康  
           演出:稲葉賀恵
          

         

 4/20の観劇から少し時間が経ってしまい、観た直後に感じたものが薄れていくのを手繰り寄せながら書いています。
 “めんどりおっ母”と死者たち(木こり、武器商人、異端とみなされ火あぶりの刑に処せられた人、インディアン、生き埋めにされた労働者・・・)の行進。それらが示す、大昔から続く愚かな殺戮の歴史。場面は一転して現在のイスラエルとパレスチナ。長く続く戦争の中で生まれ育った子どもたちは、あちら側に属するかこちら側に属するかの違いで敵味方に分かれて銃を持って戦士となっていく。親友が再会して、「今までどうしてた?」と問われてもお互い語る言葉を持たない。そんな中で、敵味方に分かれた少年と少女の恋と悲惨な結末。
 地球上の至る所で起こっている戦争やテロ。とりわけ子どもたちが銃を持ち戦いに組み込まれていることにやりきれなさを感じます。普通の暮らしが何もない、殺し合いしかない日常が無惨です。
 死者を天国に迎え入れる係の老夫婦のユーモラスなやりとりと“めんどりおっ母”の存在が、殺伐とした世界を柔らかく包んでいるように思えました。200年後老夫婦が眠りから覚めたら、世界は少しは変わっているのでしょうか?
 古い大きなトランクを沢山並べた簡素な舞台で、並べ方を変えるだけで場面の転換がされる。トランクが死者たちの長い長い旅を暗示していて面白いと思いました。


文学座2014カレンダーより

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