『先生のオリザニン』

観劇記 あまご         
2014年6月22日 三越劇場  
          作 :堀江安夫   
           演出:眞鍋卓嗣 
          劇団俳優座
         
 今月は、「樫の木坂の四姉妹」に続いて、堀江安夫:作・劇団俳優座による芝居を観ることが出来ました。倉敷での若井さん達との食事会で今度は是非東京でお会いしましょうと約束があったのです。私は仕事の関係で皆さんと御一緒することはできませんでしたが、一足先に見ました。皆さんは芝居の後、若井さん達と合流、加藤さん親子も顔だしされたそうで、一人寂しく観た私としては残念です。

 さて、芝居のあらすじですが、パンプレットを元に一部を紹介します。
 静岡県の農家に生まれた鈴木梅太郎は星雲の志を抱き東京に出て、東京駅を設計した辰野金吾の書生となります。そして、農科大学で、足尾鉱毒事件の調査で農民の立場に立った清廉潔白な研究者・古在由直と出会います。その後、ドイツに留学、帰国後は外国人との体格の差に疑問を感じ米の研究を続けるのです。そんな中で、江戸時代から蔓延していた脚気を栄養素の問題としてとらえ、オリザニン(後のビタミン)を脚気の特効薬として発見します。そして36才の時に学会でその研究成果を発表するのですが、脚気の原因は、細菌説、伝染病説と当時の医学会から罵倒されてしまいます。その時。梅太郎を励まし勇気づけたのは、辰野金吾の娘であり、妻である須磨子だったのです。時は過ぎ、やがて梅太郎の理化学研究所も戦争の影が・・・・
 
 芝居の中で、須磨子は狂言回しとして、芝居の進行役を担っており舞台の隅に須磨子の小さな部屋のような空間があって、そこから出たり入ったり、須磨子さんの笑顔が素敵で、地味な芝居のなかに小さな華やぎがあり、とても面白い演出だと思いました。

 昨年、文学座が上演したブレヒトの「ガリレオの生涯」、権力に屈することなく司法の独立を訴えながら自らの信念を貫き通した竹内一郎作・俳優座の「気骨の判決」、そして一昨年、新国立で上演された、福田善之作、思想の自由とは・学問の自由とは、河合栄治朗をモデルとした「長い墓標の列」など、時代の移り変わりの中で苦しみながらも懸命に生きていた人たちがいたことを知りました。今のような時代、このような芝居が上演され続けることは、とても大きな意味があることだと思います。

鈴木梅太郎(50〜68歳)/古在由直
 鈴木梅太郎(14〜36歳)
 鈴木須磨子
 鈴木久仁子(梅太郎の娘)
 辰野金吾
 辰野秀
 大河内正敏(理研所長・毛野村村長)
加藤剛
加藤頼
有馬理恵
笠井幽夏子
河野正明
斉藤深雪
中吉卓郎



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