『春琴』 

観劇記 あまご 
7月27日(土)
          原作:谷崎潤一郎   「春琴抄」 「陰翳礼讃」より
          演出:サイモン・マクバーニー 
              西宮芸術文化センター 大ホール
          
         


神戸ゆかりの作家谷崎潤一郎原作
イギリスの鬼才サイモン・マクバーニー演出による「春琴」を見てきました。
美しく悲しく
、新劇とか日本の古典的な舞台
能とか文楽とかのジャンルを超えた斬新的な芝居でしたね。
アッと言う間の1時間50分
芝居の筋は「春琴抄」ですが
舞台は谷崎の随想「陰翳礼讃」の世界です。
文楽の人形を操る少女時代の春琴(深津絵里)
春琴に仕える若き丁稚佐助(成河)
春琴人形と佐助との愛の営みも一見グロテスクですが
不思議な美しさを感じました。



春琴は佐助そっくりの子を産み里子に、
尋常な世界ではありませんが
細雪さえ
愚かな軍部によって発禁にあったのに
こんな作品が
あの狂った暗黒の時代に書けたとは
改めて谷崎の巧みな世界を感じます。
文楽人形はやがて本物の人間になり(写真下)




操るのは同じく深津絵里・・・
このあたりからぐっと芝居は盛り上がります。
見事な演出です、サイモンさん!
そして人間人形は深津絵里自身となり




大人になった佐助(高田恵篤)は
年老いた佐助(笈田ヨシ)となり舞台の時は流れます。
舞台背景となった「陰翳礼讃」日本美の世界ですが
現代から過去に
しかも過去の縛られることもなく
日本の美意識に縛られることもなく、時を超えた現代劇でした。
鳥籠から飛び立つ、
一枚の紙に模した雲雀の見事な羽ばたきが映像に変わり
、飛び立って行くその転換は美しく
大胆にして繊細。
日本美とイギリス演劇手法の巧みさが重なりあった
素晴らしい舞台でした。



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