『象』

観劇記 あまご 

          作  :別役実  
          演出:深津篤史(ふかつしげふみ) 
         
         
西宮芸文中ホール

「象」 それは衝撃的な舞台でした。
びっしりと様々な古着が舞台上に敷き詰められ
それは原爆で亡くなった人達を示すのか
崩れ落ちた瓦礫を表しているのか
そして
その中央にパイプベッド
会場に入った瞬間に不思議な世界に引き込まれてしまいました。

やがて
黒い傘をさした男(木村了)が現れて
彼に叔父さんと呼ばれる男(大杉漣)がベッドから起き上がります。
二人の会話から彼らが原爆によって入院していることが分かります。
叔父さんと呼ばれる男は
背中のケロイドを見世物にして街角で喝采を受けていたのですが
病状が悪化し入院中
今は




再度「あの町」に行き喝采を浴びることを生きがいとしているのです。
古着の中から医者や看護婦や通行人(山西淳)や妻(神野三鈴)が現れては、
古着の中に倒れて消えて行きます。
深津篤史演出の芝居は昨年のハロルド・ピンターの「温室」以来2度目です。
「温室」も大胆な演出には驚かされ、
期待できる若き演出家だと思いました。
隣街芦屋生れだそうです。
そして
さらに
この作品が別役実25歳の作品であること
当時(1962年初演)の若き劇作家の感性にも衝撃を感じます。
不条理劇の第一人者である彼の作品は
地元劇団による小作品を何本か見たことがあるのですが
このような大きな作品を見るのは初めてです。
私の芝居の世界も少し広がってきました。
この芝居の感想? 
あれやこれやと断片的には浮かんできますが
言葉にはなりません。
ただ不思議な劇場空間を役者さん達と共有していた
という思いが強く残った芝居でした。

辛い芝居なのに喜劇的
悲しみの裏側に隠された生命力が感じられる場面がたくさん出てきました。
写真は男と妻がロープを引っ張り合う場面です。
1本のロープで仕切られ
古着の中で引き合う場面は殊に印象的でした。
外と内
他人と身内
あの世とこの世のことなのか・・・ 




写真はパンフレットより

病人
病人の妻
医者
看護婦
白衣の男1
白衣の男2
通行人1
通行人2
木村了
大杉漣
神野三鈴
羽場裕一
奥菜恵
野村修一
橋本健司
山西淳
金成均

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