『帰還不能点』 
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観劇記 あまご 
2021年3月13日 
伊丹ピッコロシアター中ホール 
脚本:古川健 演出:日澤雄介
劇団チョコレートケーキ
1950年代、敗戦前の若手エリート官僚が久しぶりに集い久闊を叙す。
やがて酒が進むうちに話は二人の故人に収斂する。
一人は首相近衛文麿。
近衛の最大の失策、日中戦争長期化の経緯が語られる。
もう一人は外相松岡洋右。
アメリカの警戒レベルを引き上げた三国同盟締結の経緯が語られる。
更に語られる対米戦への「帰還不能点」南部仏印進駐。
大日本帝国を破滅させた文官たちの物語。
劇団チョコレートケーキHPより



岡田一郎(元内閣書記官長役:岡本篤
山崎道子(飲み屋の女将):黒沢あすか
久米拓二(元総理大臣役):今里真
千田高(元外務大臣役):東谷英人
城政明(元陸軍大臣役):栗野史浩(文学座)
市川仁(元海軍大臣役):青木柳葉魚
泉野俊寛(元大蔵大臣役):西尾友樹
吉良孝一(元内務大臣役):浅井伸治
庄子豊(元文部大臣役):緒方晋
木藤芳雄(元外務次官役):村上誠基

元役職は昭和16年度総力戦研究所の模擬内閣での役職

舞台が明るくなると
数人の男たちが難しい顔をして黙り込んでいる
ここは東京の総力戦研究所
研究生として所属している各界の少壮エリート達
彼らの結論は
アメリカとの戦争になれば日本は負けるという
しかし
当時の日本の上層部は聞き入れなかつた
結果はご存じの通り

物語は敗戦から5年経った昭和25年
日銀総裁役の山崎が亡くなったことを知った岡田が
当時のメンバーを集め
墓参りの後
山崎の未亡人が営む一杯飲み屋に集まった

戦争を回避と結論付けながら
戦争を回避できなかった自責の念に駆られた仲間たち
未亡人道子の前で
当時を振り返りながら
近衛文麿・東條英機・松岡洋介・広田弘毅に交互に扮し
即興劇を繰り広げる
米国との軍事力の差を知っている軍部は
当初は戦争回避を主張するが
松岡らに引きずられてしまう
また
事実が先行し
南京進行
南方資源の封鎖
ドイツとソ連との関係など
複雑に絡み合って
事実はずるずると展開してゆく

歴史はずるずると展開してゆく側面がある
それは守るべきものが何か不明確な
その方向性にあるのでは

今の日本を見ていると
当時と同じように
ずるずると危うき方に進んでいるような気がする
もう一度
守るべきものは何か
しっかり考えなっればと思います


黒沢あすかさん
当初の優しい聞き役から
ラストは
近衛文麿や松岡洋介の妻を演じ
現実の
山崎との出会いを演じるシーンの展開に
驚くような迫力を感じました

みごとな舞台でした

戯曲は悲劇喜劇5月号に掲載されました

 

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